君は音楽、兄の心


たとえば、メールで



From>>お兄ちゃん
Sub>>今日は暑いから
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冷や奴がいい。
生姜よろしく。

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(帰りに渋川よってきます、と)



たとえば、玄関で


「…そのチノに白レザーはちょっとどうなの」

「いや、履き慣れてるから」

「裾、ロールアップ。スエードのレザースニーカーあったでしょ?今日はそれ」

「…お見それしました、妹君」

(峠に行くんじゃないんだから…。デートなのにまったくもう)



たとえば、スーパーで


「アイスコーヒー切らしてたよね」

「オレは水出しがいい」

「お兄ちゃん作ってくれるの?」

「あきらが淹れてくれるのが一番うまい」

「……しょうがないなあ」

「お、カップ麺安いな」

「大学用に買い溜めしとく?」




たとえば、ケンカ


「お兄ちゃんはいっつもそう!自分で決めて、こっちの意見聞かないんだもん!」

「オレは最善を言っているんだ。どれだけあきらのことを考えて決めたと思ってる」

「その過剰な自信が頭にくるの!お兄ちゃんナニサマ?!もう知らないっ!」

「あきら!……くそッ!」




たとえば、ベッドで


「……ごめん」

「ん……?」

「言い、すぎたね。わたし……」

「いや……オレも、悪かった」

「……もっと、くっついて、い…?」

「ああ……おいで、あきら」




たとえば、朝



「んー……む……」

(寝顔、可愛さ10倍増し…)

「け…、い…」

(ん?啓介の夢か?)

「す……」

(ふたりで遊んでんのかな)

「……き…」

(…………ん?)


け、い、す、き……
啓、すき……
啓介、好き……!?


「くッ…!あきら…!」

「ふぉっ!?な、なにお兄ちゃん!」

「お前の一番はお兄ちゃんだよな、大好きなのはお兄ちゃんだよな?!」

「は?え、なんのこと」

「夢の中で啓介とナニをやっていたんだ……!」

「啓…あ、啓ちゃんじゃなくて、たぶんそれ、ケーキ…」

「……え」




どれもこれも、一緒にいるから、できること。


きみは音楽。ぼくの心を揺るがす、たくさんの音の集合体。なくてはならない、一生、ぼくの、かわいい妹。






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『晩ご飯は○○がいい』という主人のメールにより発展した兄妹のお話。愛しちゃってるふたりはいつもどんなお話してんのかなーと思いまして。


2013,9月アップ