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「最近、忙しそうだな」


迎えに来てくれた兄は、FCに凭れ、門で待っていてくれた。


「そう言う、お兄ちゃんだって」


迎えに来てくれるのも、ドライブするのも、久しぶりで。


「今日は神奈川に行かなくてよかったのか?」

「うん、研究所がお休みだから大丈夫なの」


春の夕暮れ

すべてが、やさしいオレンジに染まっていくような感覚


「……今日ね、」

「うん?」

「……また、告白されちゃった」

「我が妹君は大層慕われやすいな、まったく」

「そんなものなの?男の人って」

「何かあったのか?」

「決まって言われるの、『一緒に居ると楽だ』って」

「人間誰だって、共通事を持つ者同士惹かれ合うものさ」

「じゃあ、私が車に興味がなくて、普通の女子大生だったら?『私』を見てくれる人が現れる?」

「今日のあきらはどうしたんだ」

「………お兄ちゃんは?」

「ん?」

「『妹』、だから?……それとも、」

「………不安に、させてるとでも?」


国道から逸れた横道に、するりと車体を滑り込ませた。


「……時々、お兄ちゃんが、怖いから」

「……あきら」

「そんな顔をさせてるのは、『妹』のせいなのかなって」

「違うよ、あきら」

「お兄ちゃん、」

「あきらを裏切るなんて、出来やしないさ」


こんなに、いとしいのに


「信じて、いいの?」

「ああ」

「『私』を、見てくれる?」

「仰せのままに」




消え入りそうな、細く、小さな身体を、守っていこう



二度と、失うことがないように



傍に置いて、つなぎとめて



誰の手にも、渡らぬように






(あなたのすべてを信じたい)

(けれど、触れてくる手が、)

(許しを請うような、悩みを含ませているから)

(それは、私のせいなのか、別の、何かなのか)

(信じたいのに、ちくりと感じる痛みは、まだ、治っていなかった)