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空気の澄んだ、赤城の夜




星が煌めく、漆黒の空





流れる、一筋の、青









資料館の駐車場で一服してたら、ここじゃあまり聞き慣れない音がした。





……来るなら一言言えよな、


迎えに行ったのに




ターボチューンされた、重低音エンジン。

軽量シャーシとリアウィングが生み出す、風の音。

ハイパワー4WDの、力強いスキール。



そして、その重々しいボディに似合わないほどの、軽やかで、滑らかな、



流れる水のような、ドライビング。





青い、初代ランサー・エボリューション




ステアの、持ち主は、





「啓ちゃん、ひとり?珍しいこともあるのね」






オレの、大事な人





「そりゃオレのセリフ。珍しいのはアネキだろ、ひとりでココ来んの」

「家に帰ったらだーれもいないんだもん。赤城に行ったら誰かいるかなって思ったの」


大抵、アネキが赤城に来るときは、オレやアニキが傍に居る。

レッドサンズの連中で、アネキに手ェ出す馬鹿なヤツはいないけど。

だからってひとりで来るなんて。






オレがいなかったら、


メンバー以外の、男がいたら、







「……今度から、どっか走りに行くときはオレかアニキ誘え。つーか何で来るとき連絡しねーんだよ」

「え、だって、運転中だとケータイ出られないじゃない」

「運転中だとは限らねェだろ、メールしろよ」

「啓ちゃんメール送っても全然見てくれないもん」

「いや見るし。ちゃんと返信してるだろーが」

「それにメールであっても運転中にケータイ見ちゃいけません!」

「だから運転中って限らね……っあー!めんどくせー!」

「っきゃ…!」





アネキのエボ、コクピットのサイドガラスに、




細い身体を、押し付けた








「言うこと聞かねぇとキスすんぞ」








「けい、ちゃ」







「電話でもメールでも何でもいい、オレかアニキに連絡しろよな」






「う…、ん」






「よし、いい子」







「……いい子、って、私お姉ちゃんなのに」





ちゅっ






頬にかかる黒髪を、さらり、ひと撫で。



現れた桃のような肌に、たまらず、口づけを。







「けーいーちゃぁああん!!!」

「ははっ、アネキ顔真っ赤!!」

「なに、勝手に、キス、してるのよ!もー!」

「あー、やっぱアネキかわいいー!!」

「人の話を聞けぇぇえええ!!!!」








抱き寄せた、細く、小さな身体


柔らかい髪から香る、甘い花


オレを映す、大きな瞳




彼女のすべてが、オレの鼓動を、血を、動かすんだ





水の如く、緩やかに、ときに、激しく







『清い流れ』








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押せ押せけいちゅけでした!!!



啓介のまわりには自然と人が集まってくると思うので、赤城でひとりぼっちは有り得ないよねと思いつつ書いてしまった。



お名前変換なくてすみません…


2012,11アップ