年賀状1
※前回感謝文『年賀状』のつづき※変換なしです
路面の雪が落ち着いたと、向こうの天気予報が言っていた。
先のお正月、素敵な写真を贈ってくれたあの人に、会いに行こう。
居るかどうか正確性はなかったけど。
仕事帰り、ちょっと寄り道。
日光いろは坂、明智平。
「さむ……」
さすがにここまでの道には雪は多少残っていた。
路面凍結もちょっと怖かったから、上りで攻めることはせず。
四駆の馬力と、今年新しくしたスタッドレスに頼って、到着。
晴れた夜、空気が澄んで、見事な星たち。
愛車から降りて、赤城とは違う空気を吸い込んだ。
「やっぱ、会えないか、京一さん」
まわりには、エンペラーと思しきランサーたちが数台。
統べる漆黒は、見当たらなかった。
「京一、仕事忙しいみたいだぜ」
四代目ランサーを駆る清次さんが、ケータイをちらちらさせながら隣へやってきた。
「そう、ですか……残念、また、出直します」
『今日そちらに伺います』って連絡しておけばよかった。
……って言っても連絡先知らないんだった。
お兄ちゃんに訊いておけばよかったな。
なぜか急に、会いたくなった。
年賀状のせい?だけじゃない。
お兄ちゃんとは違う、別のやさしさが京一さんにあって。
それに、甘えたくなった。
って言ったら、お兄ちゃんに怒られそうだけど。
清次さんにさよならを告げて、いろはの帰り道を下っていった。
勾配がキツい斜面の凍結も、強いグリップで難なくクリア。
少しは私も峠に慣れないとダメかな、なんて考えて、アクセルを開けようとしたとき、着信音。
見覚えのない番号だったけど、仕事の相手かもしれない。
道幅の広い路肩にハザードを出し、リダイヤル。
『オレだ』
「(この声、)……ごめんなさい、運転中で、出られなくて」
『いや、こっちこそ。清次から聞いた。さっき来てたんだってな』
「お仕事、お忙しいのでしょ?また改めますよ」
『……もう一度、来られるか?今、上にいる』
「……ふふっ、完全に入れ違いだったんですね」
『渡したいものがある。気を付けて来いよ』
「何だろ、楽しみにしてます。京一さん」
会いたくて
会いたくて
さっきは恐る恐るだった上りも、へっちゃらで。
むしろ、凍結の怖さを逆手に取って。
早く、会いたかったから。
(京一さん、甘い良い香りがします)
(貰い物なんだが、食べ切れなくてな)
(………渡したいものって、)
(嫌いだったか?)
(いいえ!大好きです!)
うれしい、と、思わず抱きついた彼から香る、
あまい、あまい、とちおとめ
**********
2013,1〜2ぱち感謝文でした。
いろはの紅葉の年賀状を送ってくれた京一さんに会いたくなったヒロインちゃん。お兄ちゃんと弟には内緒で来てます。
「おう京一、さっき高橋の嬢ちゃん来てたぞ」
「…来るとは連絡がなかったが」
「下りてったばっかだし、すぐケータイ繋がんじゃね?」
「……そういえば知らんな、あいつの番号」
「マジか。オレ知ってるけど」
「……」
何でお前が知ってるんだと、清次につっかかる京一さん。で、教えてもらいます。
一方、高橋家
「はい、高橋です」
『無事着いたか?』
「ふふ、無事ですよ。ご心配ありがとうございます」
『オレの携帯、ちゃんと登録しておけよ』
「バッチリですよ、メールアドレスもね」
『何かあれば、いや、何もなくてもいつでも連絡していいからな』
「なんか京一さん、本当にお兄ちゃんみたい」
『…兄、か』
「え?」
『いや、何でもない。苺、早めに食べろよ』
「はい。おいしく頂きますね」
『おやすみ、またな』
「おやすみなさい、京一さん」
「で?いつの間に京一の連絡先を手に入れたんだ?」
「っ…お、兄ちゃん…!」
「嬉しそうな顔しちゃって、アネキ」
「啓ちゃんまで…!」
おそまつ!
2013,3加筆