Homemade


※GTチームの事柄が少し登場します。改めてコチラをどうぞ。













今年のクリスマス 一緒に過ごそう

暖炉に集まって 手を叩き歌おう








「足元、気ィ付けろよアネキ」

「大丈夫、そーっとね、啓ちゃん」


12月の日曜日。気温もぐっと下がり、そろそろ初雪かと囁かれるこの頃。薪ストーブの炎が、ゆるり、やさしく燈る暖かなリビングでは、兄、涼介がノートパソコンを開き作業中。珍しく、少しだけミルクを入れたコーヒーを傾けた、丁度その時。2階から、妹と弟の、何やら楽しそうな声。トン、トンと、ゆっくり不規則に階段を下りるふたつの足音が聞こえる。


「何か運んでるのか?」


気になり見に行こうと、飲みかけのコーヒーをテーブルに置いた。


「お兄ちゃーん!ちょっと来てー!」


腰を上げた途端、これだ。


「……何やってるかと思ったら」


可愛いふたりが一生懸命になって、運んでいたもの。この時期にしか会えない、大きな、クリスマスツリー。

しかし、


「何で下のリビングで組み立てずに2階でやるんだ」

「いやぁ、屋根裏から出してきたら全貌が見たくなってさ。な、アネキ!」

「出したらテンション上がっちゃってそのまま作っちゃった!」

「少しくらいガマンしろよ。だからこんな運びにくいことになるんだろうが」


バツが悪そうに、苦笑いのあきらと啓介。だけど、『クリスマスが楽しみで仕方ない』そんな顔だった。

あきらが涼介を呼んだ理由、それは


「せっかく飾ったオーナメントが落ちそうなの。お兄ちゃん、私と代わって?」


あきらが持っていたのは、ツリーの幹の部分。

……ここが一番重いのに、どうして啓介が持ってやらないんだ

重さのある幹を涼介に任せ、あきらは今まで落としてきてしまったオーナメントたちを拾う役になった。


「こっちの方が重いのに、何であきらに持たせたんだお前は」

「重いけど持ちやすいじゃん。階段危ねェし、持ちにくい葉っぱ持ってたら不安定だと思ってさ」

「へェ、お前もちゃんと考えてんだな、あきらのこと」

「ったりめーだぜ!」


ゆっくりゆっくり、階段を下りたら、リビングの薪ストーブの隣、庭に面したガラス窓前の一角に、そうっと置いた。そこは、涼介と啓介より少し背の高いツリーの、昔からの定位置である。


「わあ!何だか今年もまたやってきたって実感するね!」


ふわふわの、肌触りが良さそうなニットの裾を受け皿のように、あきらがオーナメントを連れてきた。


「……どれだけ落としてきたんだよあきら」

「えへへ…いっぱい」


オーナメントが壊れないよう、ひとつずつカーペットに置いていく。


「さー!さっきの続きしよう啓ちゃん!お兄ちゃんも手伝って!」

「おう!」

「ああ」


楽しそうに飾り付けるあきらの顔は、クリスマスを心待ちにしている子供そのものだ。

丸い大きな瞳が、オーナメントの光を受け、まるで、漆黒の宝石のよう。


体中に電飾を巻き付け、スイッチを入れて遊んでいる啓介。

雪を模した白いモールを、涼介の首にリボン結びをしているあきら。

お返しとばかりに、赤いリボンをあきらの髪に結わえる涼介。


両親、とりわけ母が見たらきっとこう言うだろう。

『本当に、あなたたちはいつも仲良しね』










「あきら」


ぽん、と手渡された、金色の星。


「アネキが付けろよ」

「え、でも、」


頂点に立つ、トップスターは、まるで、


「お兄ちゃん、じゃないの?」


私たちの、いつも先にいるから

輝ける、導きの、ベツレヘムの星












「GT300、優勝おめでとう」

「あのレース、観に行ってたんだぜ、オレたち」






「う、そ、」




11月、富士スピードウェイで行われた、今季の最終戦。

チームで勝ち取った、年間総合優勝。



「ドライバーのテクニックも勿論だが、チームの力があってこそだ。見事だったぞ」

「一年間お疲れさん!アネキ!」













ほろり、




ほろり、




やまない、なみだ






「う……、ん…ありが、と…!」




うれしい



うれしい




だいすきな、ふたりに、おめでとうって



観に来てくれて、ありがとう



お兄ちゃんと啓介に負けないくらい、がんばったんだよ




ああ、もう、涙、止まらないや











「今年の星は、あきらのものだよ」

「ほら、早く付けろって」


嬉しさで止まらない涙を、啓介がやさしく拭ってくれた。

嬉しさで震える肩を、涼介がやさしく包んでくれた。


「うん!」



金色のトップスターを、この手に。













………あれ、





「…………届かない、ん、だけど」







改めて言おう、ツリーの高さは『兄弟より少し高い』。

あきらの身長は(ハッキリ言うと怒るので)小柄であると。


「……ぷ、」

「だーっはっはっは!!そーだよな!アネキちっこいもんなー!!」

「ひっどーい!もういいもん!踏み台取ってくる!!」


葉の拡がりも相まって、尚更届かないあきらの頭を撫でながら笑う、涼介と啓介。キッチンにあるスツールを持ってくるつもりだろう、だが、この兄弟は、


「肩に乗れ、あきら」

「しっかり掴まってろよー」


この歳になって、兄弟に肩車されるなんて。恥ずかしいけど、でも、嬉しい気持ちの方が勝ってる。

楽々届いた頂点に、金色の星を。

先日勝ち取った頂点は、こんな楽では決してなかったけれど。

チームみんなで初めて手にした、大事な、大事な、一等星。


「ありがとう、涼介お兄ちゃん、啓介」

「どうした、改まった呼び方して」

「じゃあオレも!おめでとうあきら姉ちゃん!」

「うわあ何かくすぐったい!けど、うれしいや。ありがとう啓介!」




子供の頃に戻ったような、12月のある日。

来年も、また、3人で。









今年のクリスマス 一緒に過ごそう


今までで一番幸せになろうよ


きっと来年もまたいろんなことあるけれど


私たちなら大丈夫




幸せになろうよ







homemade christmas








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クリスマス第一弾です。

職場の各フロアに2mほどのツリーが飾ってあるのを見て、高橋家のツリーもデカくて重そうだだなと思いました。

ヒロインちゃんの成績、ドライバー&コンストラクター揃って総合優勝ということで。

スーパーGT両クラス、F1今季シーズンお疲れさまでしたー!!!!かわいいカムイたんの活躍がリアルタイムで観られなかったのが悔しいです。一貴もお疲れさまー!



2012,12,1アップ