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群馬大学教育学部
教員免許を取るために進学したこの学部とも、そろそろお別れの時期がやってきた。
三年次から始まった教育実習。そして、現在四年。実習内容が更に密度を増し、憎たらしくも可愛くて仕方のない小学生相手に、勉強の日々だった。
季節は冬。
生徒たちは、『冬休みどこ行くの?』『クリスマスプレゼントなにお願いした?』『期末テスト返ってくるねー』など、楽しそうに顔を綻ばせる。
陽向が実習生として通う小学校は、自らが通っていた母校だった。
生徒たちが帰る夕方に、陽向は日報をまとめ、現在籍を置く教育学部に提出すべく、一路大学へ。
大学を卒業して晴れて教員になった最初の学校は、やっぱりここがいいなあと考えながら、最寄駅へ進む。
冬の空は、暗くなるのが本当に早い。
大学へ戻り、やることをやって帰宅する途中に、同じ学部、同じゼミを取っている友人に会った。
「陽向、久しぶり!おつかれー!」
「ほんと、いつぶりだろ、やっぱ実習あると中々会わないねー!」
陽向と友人・アユミは、お互いこの後の予定がないことを確認、学内のカフェへ立ち寄った。
もう随分、夜の時間ではあるが、カフェも廊下も、まだ生徒が多数残っている。
ライトアップされた中庭に面した窓側、四人掛けの丸テーブルに、甘いココアがふたつ。
「楽しい?小学校は」
「体力勝負かなー、大変だけどすっごく楽しいよ」
「パワフルだもんねー、小学生って」
陽向が担当しているのは、五年生。
体力も知識も、少しずつ大人になっていく年頃だ。
「そういえば、こないだ生徒に訊かれたよ」
「何を?」
「『陽向先生、クリスマスは恋人と過ごすの?』って」
「………そう」
「……やっぱり、これ、外すべきだったかな……」
開襟ブラウスから覗く、ティファニーのオープンハート。
肌に馴染みすぎて、中々離れずにいた。
いや、『離さず』、の方が合っているかもしれない。
「今の女の子たちは目ざといねー、ちゃっかりアクセサリー見てるんだもん」
「………で、何て答えたのよ」
「………ナイショ、って、言うしかなかった」
『水平対向って、凄いんだぜ』
『やっぱターボは馬力あるからグッと踏めるなあ』
『今日はちょっと遠出しようか、陽向』
父と同じ、インプレッサの、あのヒトは、
「もう、二年、経つのにね」
その輝く青と一緒に
空の、ひとつに、なりました