兄妹弟たちのクリスマス


ding dong♪

ding dong♪


「あら、誰かしら。ママ、お料理作ってるから、三人でお出迎えしてくれる?」

「「「はーい!」」」






子供の頃のクリスマス。

やさしい雪が降る聖夜。

玄関のドアを開けた兄妹弟たちを待っていたのは、


赤いリボンが可愛らしい、プレゼントが三つ。









「あの時、雪の中必死で探したよね、サンタさん」

「『サンタさんは忙しいからプレゼントだけ置いていった』ってオフクロに言われたの覚えてるわ」

「手紙もあったよな、来年また会おうって」





高崎市街が一望できる、とあるホテルの最上階。記念日だったりイベントだったり、何かあるときは必ずここでと、昔から高橋家の御用達だ。


「お父さんたち、やっぱり来られないか……」

「正月に休みを希望してるからな、クリスマスは仕方ないさ」


大学が冬休みに入った兄妹弟は、この日、12月25日の予定を、ずっと前から空けていた。両親も一緒にこのホテルへとあきらは希望していたが、愛するあきらとの時間をゆっくり楽しみたい涼介と啓介は、両親がいない方が有難いに違いなかった。


「アネキ、今日なんか雰囲気違うよな」

「え、何かおかしい?」

「はは、いや、今日はとびきり可愛いってことさ」


弛く巻いたボブヘアに、ピンクのバラのコサージュを付けて。オフホワイトのリブタートル、円のように拡がるミニスカートは上品な千鳥格子。ワインレッドのカラータイツに、黒のロングブーツ。


「えへへ、ありがと。折角だからクリスマスっぽくしてみたの」

「よく似合ってるよ」

「つーかアネキは何でも着こなすんだよなー」


展望レストランの別室。大きな窓に面した小部屋の円卓には、今しがたサーブされた鴨肉のロースト。ワインと一緒に、料理、そして、暖かいお喋りを楽しんだ。





クリスマスツリーを模した抹茶のモンブランには、チョコで作られたトップスターが飾られている。フレーバーティーと共に置かれた可愛いスイーツに顔を綻ばせるあきらを、涼介と啓介は優しく見つめていた。


「かっ可愛くて食べられない……!」

「じゃあアネキのはオレがもらってやるー!」

「いやー!啓ちゃんだめー!」






「…………じゃ、よろしく頼む」


啓介とあきらがスイーツで盛り上がっている間、何やらスタッフと話していた涼介。


「何かあったの?お兄ちゃん」

「すぐにわかるよ、あきら」








ふっ、と落とされた照明


輝くものは、


円卓のキャンドル


小部屋に置かれたクリスマスツリー


大きな窓に煌めくイルミネーション





そして、







「メリークリスマス、あきら」

「メリークリスマス、アネキ」


兄と弟、二人の手元には、赤い箱が


「え、なに……?」

「オレたちから、あきらへプレゼント」

「開けてみて、アネキ」


涼介の手から渡された、正方形の小さな箱

啓介からは、長方形の、少し長い箱が





深紅のリボンを、ゆるり解く





ピンクゴールド

ホワイトゴールド

イエローゴールド


三つの色が形を織り成す、


『トリニティ』









「……あきらに、話があるんだ」

「え……?」

「来年の春、アニキを中心に県外の走り屋たちにバトルを仕掛ける遠征チームを立ち上げる」

「公道最速理論を完成させるために、関東を制圧する『プロジェクトD』を発足するんだ」

「関東を、制圧……?」

「いつか、あきらのチームがある神奈川にも行く。その時は見に来てくれるか?」

「オレと秋名のハチロクがドライバーなんだ。アネキが見に来てくれたらすげー嬉しいんだけど」

「ちょっと待ってよ、それじゃ、今よりもっと、」

「……一緒に居られる時間が、少なくなるな」

「だから、コレ、なんだよ」


啓介が、赤い箱からハートが重なるネックレスを取り出す。


「じっとしてて、アネキ」


あきらの正面から、抱き締めるように腕を回し、カチリ、チェーンを止めた。


「啓、ちゃん」

「うん、かわいい」



「右手を、あきら」


あきらの向かって右側に座る涼介の表情は、愛する人を見つめるそれだった。


「トリニティ、というジュエリーなんだ」


右手の、薬指に


「直訳すれば、三位一体」


三つのゴールドが、ぴたり、納まった


「あきらへの、オレたちの気持ちだよ」





どんなに離れてても、なかなか会えなくても、

三人は、いつも一緒に。




「ずっとあきらの傍にいるよ」


そのまま、右手の薬指に


「だからそんな寂しそうな顔すんなって」


前髪を上げて、額に







愛し君へ、心からのキスを贈るよ








「ありがとう、お兄ちゃん、啓ちゃん」




私からも、あるんだよ。




FCとFDに、内緒で隠しておいたプレゼント、二人とも喜んでくれるといいな。

















「お嬢様方、サンタクロースよりプレゼントを預かっております」


ディナーが終わって帰り支度をしているとき、馴染みの支配人が声をかけた。


「サンタさんから……?」

「ええ、ロビーのツリーに置いておく、と、言付かっておりますよ」








「これは、」

「三つか、」

「……ふふっ」


ホテルロビーの大きなツリーの元に、赤いリボンのプレゼントが三つ。

きっと、今頃たくさんの人の命を助けているだろう、白衣のサンタさんが届けてくれたんだ。


「お、万年筆だ」

「俺、レザーのグローブ!」

「きゃあああBRZのラジコンーー!!!やったぁああ!!!」

((子供め……))






Happy Xmas!!!!








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皆さまメリークリスマス!間に合いませんでしたすみません!(12/26深夜なう)

どうしても、トリニティでお話書きたかったんです。以前日記に書いた材質違ってました……プラチナ→ピンクゴールドでした。失礼いたしました。ヒロインちゃんがそれぞれの愛車に隠したプレゼントは、皆さまのご想像にお任せします!そしてBRZを選んだのは高橋父です。86じゃないんです(笑)車の販売期、錯誤してすみません…。



2012,12,26りょうこ