夢駆け作者、パンドラの箱をつつく(1)

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 帰り際だ。下駄箱の近くに脱いだ靴を履く。靴下が泥だらけになってしまった。夢からいつかは覚めるとはわかっているが、流石に着替えたい。そのまま、校門まで歩く。何気ない、昔によくあった光景とよく似ている。並んでいる人物に差はあるが、見える景色はほとんど同じだ。懐かしい。帰宅する他の学生達と同じように校門の前で他の四人と別れる。どうやら帰り道は違うらしい。じゃあね、と手を振ろうとすれば、「おい」と中村に呼び止められる。

「やっぱり何処かであったことがあるんじゃないか?」

 そう尋ねた彼に私は「ふはっ」と変な笑い方をしてしまった。近くにいたケイマがかすかに「は?」と言葉をこぼしたのが聞こえた。いけない。彼の返答に答えなければならないが、答えても多分彼はケイマのように理解しないように思う。だから私は口を開く。

「なに、やっぱりナンパしてるの?」

 答えではない。それは理解してる。ケラケラと笑ってそう言えば彼は眉間にシワをよせた。怖い顔だ。それを見て私は彼につけた二つ名を思い出した。

「じゃあね、貴公子さん」

 ひらりと手を振って私は帰り道に足を踏み出す。数歩かけてきて隣に並んだケイマが私をみた。

「なんだよ、貴公子って。アイツすごい顔してたぜ」
「すごい顔?」
「驚きと警戒が混ざったみたいな顔」
「うぇっ、やってしまった」
「つーか、コウヘイがお前に見覚えがあるのってもしかして」

 ケイマの言葉に私は頷く。君の仲間の一人だね、と答えれば彼は「マジかよ」と呟いて振り返った。そしてしばらく後ろを眺めてから前を向く。珍しく彼の眉間にシワが寄っている。

「ミドリ、お前やばい箱突いたっぽいぜ」
「……やっぱり?」
「誰かついてきてるけど誰かがわからねぇ。気味が悪いくらい気配がないのに異様な感覚がする」

 それは間違いなく彼の従者です、とはこの場では口が裂けても言えまい。ケイマがもう一度視線を後ろに向けたと思った瞬間、彼は私の手を引いて走り出す。うわっと変な声が出たのは仕方がない。パン!と何かが破裂したような音がして、振り返ればパンクした車がハンドルを取られたようで突っ込んでくるのが見える。
 ――まぁ、ケイマが私を掴んで避けてくれたおかげで塀と車の間に挟まれることはなかったが。
 ザワザワと次第に野次馬がやってくる。ケイマは私を掴んだままその場から逃げ出した。マンションにたどり着くと例のエレベーターに乗り込む。彼が何か操作をすればエレベーターはまた地下へと向かった。

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