内側の結界が破れ急いで外に向かうと、厚藤四郎や沢山の時間遡行軍と戦っている瑪瑙さんたちがいた。

空間の歪みは破壊したようだが、その前にこちら側に来ていた敵は予想以上に多かったらしい。瑪瑙さんも脇差部隊も別れ際より傷が酷くなっている。

薬研たちに目配せすれば、それぞれ散って敵に向かっていった。私も瑪瑙さんを囲む敵に今剣で斬りかかる。



瑪「クロちゃんっ、無事だったんだね」


『遅くなってすみません』


瑪「いいや、かなり早いよ。…その血は?」


『私のではありません』



ここの審神者の血だ。手についた血は拭ったけれど、服についたものはどうしようもない。勿体無いですがもうこの服は着られませんね。



『瑪瑙さんこそ、その傷はどうしたんです?』



向かってきた敵の打刀を弾いて瑪瑙さんと背中合わせに会話する。彼の頬にある一筋の切り傷。黒い上着の左の袖だけが赤黒く見えるのは気のせいではない筈だ。



瑪「…目敏いね。ちょっと油断した。歪みを壊す瞬間に敵が一体飛び出してきてね。そいつはすぐに破壊したけど腕はこのザマだ。でも、そんなに深くはないし血も止まってる。利き腕じゃなかっただけマシだよ」


『…そうですか。早く終わらせて手当てですね』


瑪「だね!」



互いに地を蹴り、敵のそれが振り下ろされる前に斬りつけていく。私も瑪瑙さんも今剣と骨喰さんに霊力を纏わせることで浄化もしながら倒す分、与える一撃は刀剣男士より弱くとも効力はある。

敵が倒れながらサラサラと消えていく中で次の敵の攻撃を飛び退け、背後に迫った敵を蹴り倒し、横から突きを繰り出してきた槍を反り返りながら避ける。
…今のはちょっと危なかったです。


だんだんと減りつつある時間遡行軍。しかし、気を抜いてはいけない。周囲を見回せば、少し遠くで厚藤四郎と戦っている乱と小夜。

私か瑪瑙さんが行ければ浄化も出来るのだけど、私たちは悉く時間遡行軍によって阻まれる。否、彼らは私たちを消すのが目的なのだから、向かってくるのも当然なのだが。



薬「大将!大丈夫か?」



互いに無事なのがわかる距離までに縮まった。薬研たちも未だ軽傷で済んではいるけれど、多勢に無勢はさすがに参るようだ。



『私は大丈夫です。そちらは?』


薬「見ての通り、やべぇ傷はねぇが…。厚がいんのが厄介だな」



やはりそこですか…。全力で迎え撃てる敵の中で手加減しなければならない相手がいるのはこちらとしては不利だ。

乱と小夜も厚藤四郎を説得しながら自分たちより大きな太刀や薙刀を相手にしている為、疲労も見えてきている。瑪瑙さんも片腕が負傷している分動きにぎこちなさがある。

これ以上長引かせてはいけない。ただでさえ、厚藤四郎は破壊できないのだから。

…と、なると…



『…薬研』


薬「…………」


 

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