本丸にある大きな鳥居。そこが各時代と場所に繋がるゲートになっている。そこを通って私もここに来たのだ。
大太刀を背中に背負ってそこに向かい、横に設置してあるパネルを操作する。まずは敵の少ない函館から行けとあの後真黒さんに言われたので、函館のボタンをポチリ。鳥居の先の景色が異空間となって歪んでいく。
「何やってるんだ!?」
『?』
何やら聞き覚えのある声がした。振り向いたら、昨日の真っ白さんが私と鳥居を凝視してそこに佇んでいる。
「まさかとは思うが…単騎で出陣する気じゃないだろうな?」
『そうですけど?』
「っ!?君は馬鹿なのか!!?」
『失礼ですね。頭は良かった方だと思いますよ』
一応これでもトップにはいたんだもの。頭は悪くないと思う。たぶん。
『それで、何かご用ですか真っ白さん?』
「真…っ!?」
『すみません。顕現したお姿だと誰がどの刀剣だか名前がわからないもので。本体は勉強したからわかりますけど、認めてない人間には呼ばれたくないでしょう?』
「!!?」
名前は大事なものだ。その人、その物の存在を証明するもので、審神者のように力ある者が不用意に名乗ってはいけない。神に教えれば、万が一気に入られてしまった場合、隠されてしまうことがあるらしい。俗に言う神隠しというやつだ。だから審神者は縛られないように偽名を使うことになっている。
刀剣男士も名前を呼ばれることで縛られ、その主次第で今後が決まってしまうのだ。
だから私は呼ばない。貴方たちが私を認めてくれるまで、私は名前を紡ぎませんよ、鶴丸国永様。私なんかが口にしてはいけないくらい、貴方たちの名前は美しく尊いから。
『今日も見張りですか?』
鶴「あ、ああ…って、確かにそうだが…!」
『それは御苦労様です。では外出しますのでこれで』
鶴「待…っ!!」
彼の制止する声がした気がするが、その前に私は鳥居の中に飛び込んだ。
さて、試し斬りといきましょうか。