「ほら!アタシらも手入れ部屋行くよ!!和泉守もいつまでボサッと突っ立ってんだい!!」
和「は!?ちょっ俺はまだ…!」
左文字兄弟が出ていくのを見送ると女性寄りの喋り方が聞こえ、何かと思えばあの長髪の男性(会話の流れからして和泉守兼定様らしい)をどついている花魁風の刀がいた。
…男性…だよね?刀剣″男″士ですもんね?
女の私から見ても物凄く綺麗なオネエさんだ。
「他の連中もいつまでブスくれてんだい!さっきからこの子の話聞いてりゃ良い子なのわかりきってんだろ!?」
和「っ、それは…」
「それに昨日本丸の空気が変わった時に「良い風だ…」とかボソッと呟いてたのは他でもない兼さんなんですよ!」
『ほぉ?』
和「それは言うな!というかいつの間に会話に入ってきたんだ国広!!あんたも「ほぉ」って何だ!!」
『すみません。何やらこちらのお綺麗な方と国広様?から目配せをされたもので』
和「〜っっ!!?」
次「あら!アンタ見る目があるねぇ!アタシは次郎太刀」
堀「僕は堀川国広です」
次「話はずっと聞かせてもらったよ」
ニカッと笑った次郎太刀様が私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
次「この本丸の空気は審神者の霊力によって左右する。だからアンタが浄化してくれた時にはアンタが良い審神者だってわかってたんだ。ただまぁ、やっぱ恐怖心って抜けないもんでねぇ…」
『おじいちゃんも同じこと言ってました』
次「ぷっ!おじいちゃんって三日月かい!?良い渾名つけられたもんじゃないか!」
あははと豪快に笑う次郎太刀様は居酒屋のお姉さんみたいな印象を受ける。
でもこういうサバサバした元気な人がいるとちょっと安心する。どことなく雰囲気が妹に似ているからだろうか?
次「ま、何はともあれアタシはアンタが気に入った!仲良くやろうじゃないか!ほら和泉守!」
和「っ、わぁったよ!行きゃ良いんだろ行きゃあ!!
………悪かったな」
『いいえ。貴方の態度は尤もでしたからお気になさらず』
和「……は、なんかさっきまでのが馬鹿らしくなってきたぜ」
手入れよろしくなと言って和泉守兼定様が出ていくと、堀川国広様も後を追って行く。
次「兄貴たちも行くよ!」
太「わかっています。…私は太郎太刀。先程次郎も申しました通り、貴女の浄化のお陰でここの空気が神聖なものへと変わりました。心から感謝致します」
……本当に兄弟ですか?二人揃って背が高いけど雰囲気も喋り方も全然違うのですが…。
『…どういたしまして。でも私は、私に出来ることをやっただけです。これから先もやれることをやるだけ。だから、手入れをさせて頂いても宜しいですか?』
太「ええ、勿論です」
次「そんじゃ、アタシらも手入れ部屋行ってるからね」
『はい。あ、出来れば重傷な方から手入れの順番を決めといて頂けると有り難いです』
太「わかりました。よろしくお願いします」
次郎太刀様を先頭に、大太刀二人は他の打刀も数人引き連れて手入れ部屋に向かった。
敵意は無かったけど、会話してないから何ていう刀たちだったのかはわからない。後で名前聞かなきゃ。
それにしても、和泉守兼定様とは一戦交えるのかと思ったけど、まさか次郎太刀様に説得されるとは…。次郎太刀様には今度美味しいお酒でも買ってあげよう。お酒好きそうな感じだったし。