というわけで、刀剣たちの部屋から出て数分。
何部屋か見て回りながら気づいたのは…



『(つけられている…)』



気配から察するに二人。二ヶ所から視線を感じるから一緒に行動しているわけではなさそうだ。
監視でもしてるのか?まぁ良いけど。

次はこの部屋だな、と思ってその前に立つと、何だか他と違う感じがした。何がって言われてもわからないけど、強いて言うならこの辺一帯の空気が淀んでいるというか、邪気っぽいのが溢れ出ている。

後ろから刺さってくる視線もちょっと鋭くなったような。ここ絶対に何かあるな。開けたくないけど確認はしなきゃ。



『…………』



一度深呼吸してから覚悟を決めて襖に手を掛け、そっと開ける。暗くて見えない室内に少しずつ光が入り、その全貌が明らかになった。



『っ!!!』



思わず口許を押さえて踞った。苦い胃液が喉元まで競り上がってくる。



『っ、ぅぇ…こほっ…げほけほッ』



一度見てしまったそこは、まさに地獄そのものだ。
敷きっぱなしで黄ばんだ染みの多い布団。そこかしこに散らばる拘束器具と、この日本家屋に不釣り合いな玩具の数々。

そして、壁一面に貼られた写真は…



『っ、ぐ……ゴホッ!』



頭にフラッシュバックする映像と吐き気。

まずい、咳こむまでに留めなきゃ。こんなとこでリバースなんて…自分のモノでお掃除増やしたくないもの。

収まれ…



『げほ、げほっゲホ…はッ』



…ヤバ、涙出てきた。



「おいっ、大丈夫か!?」


『っ!』



突然かけられた声に咄嗟に振り向いて距離を取る。それがまずかったのか咳が余計酷くなって、相手の確認すらも出来なかった。

刀剣男士…ですよね?見張ってた内の一人だと思うけど、何しに出てきたんだろう?
て、それよりもそろそろ本当に苦しくなってきた。

すると、もう一人の気配も近づいてきて二人で何かを話しているのが聞こえた。内容まではわからなかったけれど。
そうして二人を気にしつつも落ち着かせようと胃液と格闘していると、背中に何かが当たって上下に動くのがわかった。
…擦られている?



『は…っ、けほっ……なん…っ?』


「良いから」



やけに落ち着いた声で制止された。このまま擦られてろとでも言いたげな低い声。優しい手つきには私の知らない暖かさがあって、すごく心地良い。



 

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