シ『良かった。クロと仲良くやっていけてるみたいで』



心から安心したように微笑み、シロは窓の外へと目を向けた。

青く澄んだ空に二羽の雀が戯れながら飛んでいく。それを見たシロはどこか寂しそうに瞳を揺らしたが、一つ瞬きをするとまた明るい太陽のように笑った。



シ『言っておきたいことっていうのはね、クロが無理しないように見張っといてほしいんだ。クロって他人のことはよく見てるのにさ、自分のことになると極端に無頓着になるから』


大和「あー…確かに」


薬「ははっ。妹のあんたでもそう思うのか」



心当たりがありすぎる。大将は特に飯の時間を忘れ勝ちなんだよな。書類に専念してる時は明かりを灯すのも忘れてることがあるし。目が慣れちまうんだろうが、短刀じゃねぇんだから夜目なんて効かせなくても良いだろうに。



シ『あ、もう知ってるんだ?そうなんだよねぇ、これはもう妹だからこそ気になってることっていうか…。まぁ、クロは健康体で私がこんな身体だから…、もう治らない癖なんだろうね』


大和「…………」



癖…か。他人を気にすることに慣れ過ぎて自分を省みなくなっちまったんだな。

俺たちは人の身を与えられてからそんなに経ってねぇが、自分が負傷すれば手入れしてくれと思うし、誰かが負傷すれば早く治してやってくれとも思う。それが普通なんだろう。

けど、病を患っているシロに対して大将は丈夫みたいだから、多少の無理を無理だと思えなくなっちまってる。霊力もでかすぎるし剣術も申し分ねぇくらい強いしな。自分の限界をわかってねぇというか、底が知れねぇ。



シ『強いでしょ、クロ。特に心が』


薬「ああ。長年刀として色んな人間見てきたが、あんなに綺麗で強い瞳を持つ人は初めてだ」


大和「洞察力も凄いよね。会ってまだひと月も経ってないのに見透かしてるのかってくらいズバズバ言い当てるし」



おっと、その苦笑は大将に何か言われたのか?
こんな困ったような照れてるような表情をする大和守は初めて見る。



シ『えへへ、私の自慢のお姉ちゃんだからね!審神者養成所でも人一倍努力して、学力も剣の腕前も一番だったんだって。誰よりも強くて大事なものをとことん愛するクロは、私の生きる理由なんだ!』


大和「生きる理由?」


シ『うん!クロもそうだよ。私はクロの為に生きてて、クロは私の為に生きて私の帰る場所になってくれてるの。あ、今はキミたちの為にも生きなきゃって思ってるだろうね』


大和「そ、そう…かな?」


シ『そうだよ!だってクロ、キミたちのことは″物″じゃなくて″一つの命″として考えてるもん!』


「「!!」」


シ『私はね、早くクロのとこに帰って今度は私がクロを守ってあげたいんだ。しわしわのおばあちゃんになるまで長生きして、クロと一緒に幸せに幸せに暮らすのが夢なの。大事なお姉ちゃんをこれ以上政府なんかに好きなようにさせて堪るもんですか!』


薬「(!今の言葉…)」





刻「ボクはねぇ、だぁいすきなクロちゃんを守るって決めたんだぁ。クロちゃんがもう傷つかないようにぃ〜。クロちゃんに与えられた未来への筋書きなんてボクがぜぇんぶ斬り裂いてぇ、でもでもクロちゃんの守ってるモノはぜぇんぶ守り抜いてぇ、幸せな幸せな物語にしてあげるのぉ〜。それがボクの夢なんだぁ〜」





刻燿の夢に似ている?偶然か?



シ『本当は私が病気を治して早く戻ってあげられれば良いんだけどね。それまででも良いからさ、クロのこと気にしてあげて?クロは間違いなくキミたちが手放したくなくなる審神者だから。妹の私が保証する!』


大和「ふふっ、他ならない妹さんの保証なら間違いないね」


薬「はははっ、そうだな。大将の面倒は俺たちに任せて、あんたは病との闘いに専念しな」


シ『ありがとう!』



良い笑顔だ。前に見た大将のそれとはまた対照的な明るい笑顔。大将の言う通り、この子が病気だとは到底思えねぇ。守ろうと頑張る理由もよくわかった。



 

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