お祭りの会場は政府機関内にある。そこは普段は広々とした芝生が整えられた広場なのだが、今日は屋台がずらっと並んで道を作っていた。
すっかり日が沈んだ闇夜の中に灯された沢山の提灯。漂ってくる煙からは醤油の香りがする。
お祭りは数日に渡って開催されている筈なのだが、やはり参加している審神者の人数も連れている刀剣たちも多く、ごった返している。審神者一人につき刀剣六人までではこうもなりますよね。
因みに、瑪瑙さんの今日の近侍には鶴丸さん。シロのお見舞いで会った方だ。他に連れてきたのは燭台切光忠さん、大倶利伽羅さん、平野藤四郎さん、秋田藤四郎さん、乱藤四郎さんだ。
比較的大人しい方が多いように見えるけれど、燭台切さんと大倶利伽羅さんは鶴丸さんのストッパーなのだとか。羽目を外し過ぎないように見張り番らしい。
…良いんですか、それで。
翡翠さんの近侍は固定で鯰尾さん。その他に骨喰藤四郎さん、次郎太刀さん、太郎太刀さん、和泉守兼定さん、堀川国広さんがいる。
翡翠さん曰く、親子ペア三セットらしい。…成る程。
忘れてはいけない瑠璃チーム。彼女にはやはり石切丸さんが近侍としてついており、同田貫正国さん、鳴狐さん、鶯丸さん、獅子王さん、岩融さんを連れてきていた。
何故か彼女のとこだけ短刀と脇差がいない。石切丸さんに聞いてみたところ短刀たちでは瑠璃を抑えられないからだそうで…、彼らが自ら大きい者たちを選んだのだとか。
…何と言うか…彼女の本丸らしい刀剣たちだった。
瑠「随分と混んでるわねぇ」
翡「スカスカな祭りなんかねぇだろ」
『どうします?この大所帯では進めそうにないですよ』
瑪「だねぇ。俺達だけでも合わせて二十八人。それぞれ別行動しようか。お祭り終わる時間にはまたここに集合で」
瑠「了解!よぉし行くわよみんな!!」
石「あっ、こら主!」
獅「おいッ、一人で行くな!!」
別行動と聞いて直ぐ様反応した瑠璃は一人で人混みの中を進んでしまった。石切丸さんたちも追うけれど…
翡「…アイツ絶対迷子になるぞ」
瑪「一番小柄な鳴狐が追いついてない時点でもう迷子だよ」
『身体の大きい彼らでは進みづらいでしょうね』
既に人混みに阻まれてます。短刀脇差に来て貰うべきだったのでは?
岩融さんなら頭が飛び抜けているから目印にはもってこいですけど。
瑪「ま、今日くらいは良いんじゃない?ここなら敵もいないし」
翡「それもそうか。じゃ、俺らも行くぜ」
鯰「はーい」
瑪「俺たちも行くけど、クロちゃん気をつけてね」
『え?』
瑪「いくら審神者と言えど、お祭りだと浮かれた人間も多いからね。刀剣たちがいれば大丈夫だろうけど、クロちゃんは女の子だしさ」
『ご心配ありがとうございます。彼らのことは頼りにしていますし、大丈夫ですよ。何かあったら瑪瑙さんたちにもご連絡します』
瑪「うん。じゃあ行くね。みんな、クロちゃんのこと守ってあげてね」
今「まかせてください!」
薬「ああ、言われなくとも」
そうして瑪瑙さんと翡翠さんグループもそれぞれ好きな方向に進んでいき、あっという間にその背中も見えなくなってしまった。
加「さてと、主はどこから回る?」
『え?ええと…』
改めて聞かれるとどこから行けば良いのだろう?ここから眺めるだけでも様々な屋台があって、どれも見てみたいのだけど…
薬「順番に見て回らねぇか?立ち止まってるだけじゃ何もしねぇで終わっちまうぜ」
『そうですね』
薬研に促されてとりあえずは近くにあった屋台から。
今「あるじさま!これたべたいです!」
早速催促されてしまいました。
先程から香っていた醤油の香りの正体は焼きとうもろこしだったようだ。丁度良い焦げ目に塗られた醤油が提灯の灯りでテラテラと光っていて、見ているだけでお腹が空いてくる。
『美味しそうですね。五虎と小夜も食べますか?』
五「い、良いんですか?」
『良いですよ。食べます?』
五「はいっ」
『小夜は?』
小夜「僕は…」
小夜が見ているのは焼きとうもろこしの屋台の隣。大きな袋が沢山ぶら下がっていて、屋台の中ではおじさんが機械から出る綿を割りばしにくるくると絡めている。
『綿菓子ですね』
小夜「うん…。ダメ、かな?」
『いいえ、ダメじゃありませんよ』
大和「じゃあ、僕と小夜で綿菓子買ってくるよ」
『はい、お願いします』
大和守にお金を渡し、私たちは焼きとうもろこしの屋台に並ぶ。並んでいる間も凄い人だとか、あっちの屋台も気になるだとか会話が絶えない。
…こういうイベントも良いものですね。
無事に焼きとうもろこしを購入し、隣の屋台でも綿菓子を抱えた小夜たちを回収して次に進んだ。
『唐揚げやイカ焼きは最後に買って帰りましょうか』
薬「留守番連中への土産だな」
『はい』
お酒に合うものはよくわからないけれど、甘いものよりは良いだろう、たぶん。その辺は薬研たちと意見が合えば当たっているでしょうし、大丈夫の筈。
今「あるじさま!つぎはかきごおりをたべましょう!」
『今剣は食べるの早いですね』
加「主、俺あの林檎のやつ食べたい」
小夜「あ、僕も」
加「買ってきて良い?」
『えっと、林檎飴ですね。はい、どうぞ』
五「あっ、虎くん!」
『ん?…ああ、鮎の塩焼きがあるんですね』
大和「買ってこようか?」
『そうですね。端っこで食べさせてあげましょう』
五「す、すみません。ありがとうございます」
薬「…食い物ばっかだな」