───どうして……愛してくれないの?
一人でいるには広すぎる広間。そこに座ってどれだけの時間が過ぎただろう?
主の初期刀として呼んでもらって、最初は凄く嬉しそうに撫でてくれたのに…。愛してるって言ってくれたのに…。
いつの間にか俺は主の目には映らなくなって。次から次へと新しい連中が来る度に、近侍から外され、隊長からも外され、居場所が無くなる感じがして怖くなった。
どんなに綺麗に爪紅を塗っても、髪を整えても気付いてくれない。無意識に自分の手の甲を爪で引っ掻くようになったのはいつからだろう?もうこれくらいの痛みは感じなくなってしまった。
ある日、捨てられたくなくて主に構ってもらおうとしたら、柏手を打ったような音がすると同時に主が目の前からいなくなった。じんじんと熱く痛くなる頬に手を添え打たれたんだと理解する前に主に手を引かれた。
やっとまた構ってもらえると思ったら行き着いた先は使っていない広間で、俺はそこに投げるように放り込まれた。
「アンタ、ここから出て来ないで。ウザイ」
久しぶりに聞いた主の声は怒りに満ちていた。振り向いても主の顔を見る前に襖がバンッと閉められて静寂が俺を襲う。
す て ら れ た
たった五文字のその言葉が俺の頭を埋め尽くし、深い闇が蓋をするように目の前が真っ暗になった。
──可愛くしてたのに…
──主に尽くそうって出陣も内番も頑張ったのに…
──そんなの、ただそうしてた″つもり″だっただけ…なのかな?
──俺の自己満足?
──主……俺はもう…いらないの…?
身体から力も抜けて座り込んで、夜が来ても、朝が来ても、何も考えることが出来なくなった。俺にとっては、主が全てだったから。