──四日後。
薬「薬研藤四郎、ただいま帰還した」
大広間にて、私が座る真正面に正座し、頭を垂れる薬研。その周囲では皆さんがこの本丸で初めて極となった彼の姿に魅入っていた。
色白で儚げだった印象も残ってはいるけれど、その声音は修行前までより更に力強い男らしさを感じる。
『お帰りなさい、薬研藤四郎。極となった気分は如何ですか?』
薬「生まれ変わった気分だ。なんつーか、人助けしてみたい気分?」
『……成る程。強くなりましたね』
薬「おう。改めて、よろしく頼むぜ大将」
『こちらこそ、宜しくお願い致します』
乱「んもう!! 二人していつまで堅苦しい挨拶してるのさ!!」
私たちのやり取りを静かに見守ってくれていた皆さんだったけれど、我慢の限界にきたらしい。乱が腕を振り回しながら声を上げた。
乱「薬研も主さんももっと何かあるでしょ! 四日間も離ればなれだったんだからさ!」
『主らしい挨拶も必要ですよ。減り張りを付けなくては私の主としての威厳がなくなります』
鶴「はは! こんな時まで君は君らしいな!」
薬「大将も強くなったなぁ」
『だと嬉しいです』
乱「もうもうもう!! 挨拶終わり!!
はい! ここからは恋人の時間!!!!」
パンッと手を打ち鳴らす乱に苦笑する。そんなに堅いことをしてただろうか?
薬研も同じことを思っていたらしくぽりぽりと頬を掻く。
しかし……
薬「そんなに言うなら……」
『? ぇ……ちょっ……!』
薬「ちょいとクロ借りてくぜ。夕餉までには戻る。
しっかり掴まってろよ、クロ」
私を横抱きにしてそう言うと、一瞬の内に皆さんの姿が消えた。
……否、私たちが皆さんの前から消えたのだと理解するのは、目の前に広がる美しい風景を暫く眺めた後だった。
乱「あああああああ!!!!?」
厚「あ〜あ、大将隠されちまった。やりすぎたな乱」
乱「もぉおおおなんでこうなるの!? ボクらの前でイチャイチャラブラブちゅっちゅしたっていいじゃん!!」
一「乱……」
厚(見られたくねぇから移動したに決まってんだろうが……)
三「ははは。しかしまさか薬研が主を隠しにかかるとは」
鶴「ああ。驚くほどに変わったらしいな」
一「はい。晴れ晴れとした良い表情になりました。極の修行……、心配していましたが、兄として私も嬉しい限りです」
乱「よし! じゃあ次はボクが修行ね!」
一「え……」
厚「乱の次は俺な!」
一「み、乱? 厚?」
小夜「その次は僕が行く」
江「お小夜……」
小夜「僕も強くなりたいから」
「「…………」」
宗「兄たちの心労はまだまだ続きそうですね」