「大将!」


「主!」


「主さんっ、無事だったんだね!」


「はい。ご心配をお掛けしました。薬研も乱も小夜も大怪我はしていませんね?今剣、戻って良いですよ」


「はーい」



襖を閉めて結界を施し、今剣にも顕現を許可して一息吐く大将に俺たちもほっと胸を撫で下ろした。

見たところ怪我一つしちゃいねぇし息も乱れてねぇ。あれから何事も無くあの大太刀を倒しただけなのか否か。それはわからねぇけど、大将が無事で良かったと安心した。



「青江さんたちもご無事で良かったです」


「ああ。良いねぇ女の子にそんなこと言われるの」


「ちょっと青江さん?主さんに怒られるよ」


「クロちゃん、うちの主さんとは会わなかった?」


「会いました」


「瑪瑙はいま、てきと″おにごと″ちゅうですよ」


「鬼事?」


「ご説明します」



大将たちも交えて円になって腰を落ち着けると、大将は俺たちと別れた後のことを話し始めた。



「二階の床が抜けて落ちた先、一階の床まで抜けてしまい地下一階に辿り着いたのですが、そこには更に多くの時間遡行軍がいました」


「たちも、おおたちも、なぎなたも、たっくさんいたんですよ!」


「とりあえずは上に戻ろうと思って敵さんを倒しながら階段を探していたのですが…、思った以上に敵さんたちがしつこくて…」





「あるじさま!」


「!」


ザンッ!!!





「ふぅ、危ない危ない。大丈夫だった?クロちゃん」





「太刀の懐に入って斬りつける寸前、横から瑪瑙さんが現れて倒してくれたんです」


「主は美味しいとこ持ってくねぇ」


「おいしくないです!けっかてきにたすかりましたけど、あやうくあるじさまも瑪瑙のえじきになるところだったんですよ!」


「…それで、瑪瑙さんと共闘することになったのですが中々に敵さんの数が多くて進めなくて…。今みたいに一旦物陰に隠れて結界を張って話をしました」





「審神者の遺体があったんだね?あと堕ちた厚藤四郎か…。こっちはただ部屋があるだけだったよ。君に連絡しようとしたところでまさかの時間遡行軍の登場。俺と骨喰は青江たちとはぐれた」


「それはこちらも同じです。貴方に報告する直前に時間遡行軍と遭遇し、この地下へと放り込まれました」


「審神者が二人も揃ってこのザマとはね。…でも、だからこそわかったこともある」


「そうですね」





「時間遡行軍の狙いは私たち″審神者″です。審神者を始末すれば、彼らにとって目障りな刀剣男士もただの刀に戻ります。まさに一石二鳥ですね」


「じゃあ、外に出られなかったのは…」


「時間遡行軍を率いる者…、歴史修正主義者による結界が張ってあるからです」


「審神者も俺たちも皆閉じ込めて袋叩きってわけか」


「でも、なんでこの本丸で?」


「…それはわかりません。彼らにとって都合が良い場所にあったからなのか、目についた黒本丸を根城にしただけのか…。何にせよ、このままここにいては袋の鼠です」



大将は立ち上がり、小窓から見える外を眺めた。空の端が明るくなってきている。もうすぐ夜明けだ。

それを確認した大将はこの部屋に張った結界を解きながら言う。



「瑪瑙さんは今、敵さんたちを引き付けながらある場所に移動しています。私たちもそろそろ行きましょうか」


「ある場所?行くってどこへ?」


「この結界を壊し、本来の仕事を終わらせに」










振り向いた彼女の瞳には、あの″負けず嫌い″の強い光が宿っていた。


 

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