部屋数が多い。何も無い和室が多すぎる。たぶん集めた刀剣男士用にってことなんだろうけれど、それにしても多いし広い。
(迷子になりそう……)
本当に住むんですよね? ここに? 何か嫌なものが取り憑いている気がしてならないのだけれど…。
と、辺りを注意深く観察しながら進むと、手入れ部屋を発見した。でも手入れに使われた様子が無い。
と言うのも、明らかに使ったことが無さそうな打粉が埃を被ったままそこにあったからだ。新品、持ってきておいて良かった。
そして資源の倉庫。心もとない資源が置いてあるだけだった。
次に見つけたのはお風呂場。多人数で入る用に作られたのか大浴場だ。その後も厨と厠も見つけたけれど、どこも汚すぎて抱いた感想は全て同じ。
(お掃除、大変だ……)
そうして順番に部屋を見て回り、漸く辿り着いたのは沢山の気配の集まる部屋。感づいてはいるらしい。襖の奥から殺気がビリビリと感じられる。
出来ることなら引き返したいけれど、そうも言っていられない。覚悟を決めて、そっと襖を開ける。
(…………酷いな……)
目の前にある光景に思わず目を細めた。
刀剣男士は初めて見るけれど、大人から子供まで様々な容姿をしているものの、皆揃って目に生気が無い。それどころか、怪我だらけで小さい子たちは倒れていたり、大きい人も壁に寄り掛かって目を閉じていたり…。
そんな中でも私の姿を確認した数人(数振りというべき?)は、抜刀して私を睨み付けている。
「人間……何をしに来た……?」
睨んでいる長髪の男が私にそう聞いてきた。
一応目的くらいは言うべきか?
とりあえず、彼らを刺激しないようにその場に正座し、頭を下げる。と、少しだけど動揺したような気配がした。
「私は時の政府に、ここの後任の審神者になるように言われて来た者です」
「なら不要だ。俺たちは人間なんざ信じねぇ。特に政府と審神者はな」
あれま。バッサリ言われちゃった。
と言われても、私だって好きでここの担当になったわけではない。政府の命令は、無視するわけにもいかないのです。まだ死にたくないもの。
「酷い仕打ちを受けてきたのはわかっています。だから私を信じなくとも結構です」
「……は?」
「今日は、挨拶に来ただけです。出来れば手入れもさせてもらえたらと思いましたけれど」
ここまで警戒されていたら触られるのも嫌だろう。重傷らしい倒れている子を庇うようなお兄さんだっているし、とてもじゃないけれどすぐに手入れはさせてもらえなさそうだ。
それに、たぶんこの人数分を治すには資源が足りない。交渉する時間があるなら資源調達する時間がほしい。
「私はこれからこの本丸の浄化と清掃にあたります。もし身体が辛くなってきたら来てください。手入れしますから」
それでは……と言ってからまた頭を下げて襖を閉めた。
暫くは距離を置いた方が良さそうだ。彼らの傷は思った以上に深い。身も心も。
人間に傷つけられたのだから、人間を一括りに見てしまうのは仕方の無いことだろう。私だってそうだもの。
さて、一先ず刀剣は置いといて、空気浄化しながら掃除に取り掛かりましょうか。