途端に背後から盛大な溜め息が聞こえ、見れば皆さんは疲れた表情で座り込んでいた。鶴丸や和泉守は芝生に寝転がっている。
「大丈夫ですか?」
「嵐が過ぎ去るってこういうことを言うんだな」
「鶴さんが言うことでもないと思うけど、そうだね…」
「なにもしてないのにつかれました…」
「僕も…」
「…和睦のため……しかし彼女とは馬が合いそうにありません…」
「彼女は女性としての清楚な振る舞いを覚えるべきです」
あらま、江雪たちにまで言われてはどうしようもないですね。…清楚な振る舞いをする瑠璃は思い付きませんし無理でしょう。諦めてください、宗三。
…さて。このまま今日はグダってしまうのも良しとしたいところですが、彼らには悪いけれど一仕事してもらいたい。
「この溝、埋めなければいけないんですよね」
「「「「「!!!!!」」」」」
瑠璃が残した衝撃波の傷跡。
幸いなことに深くはないけれど…
「長ぇ…」
刻燿は衝撃波を打ち消したわけではなく、軌道を反らしたのだ。その跡は瑠璃が立っていた場所から私のいた場所、更にはその先にある鳥居の真横を通り過ぎたところにまで向かっている。
本丸の環境は私の霊力で保たれるものだけど、木や花みたいな自然に生命力を与えることは出来ても壊れたものを修復するのは論外だ。
よって、手作業でこの溝を埋めることになる。
「埋めましょう」
「「「「「えぇえええええ!!?!?」」」」」
ですよね、その反応が普通です。貴方たちは何も悪くありません。
でも、早く片付けてしまいたい理由もちゃんとあるんです。
「終わったら刻燿の歓迎会、しませんか?」
「「「「「!!!」」」」」
「歓迎会?」
新しい仲間が加わったのだから、ちゃんと歓迎してあげないと。まぁずっと傍にはいたのだけど、顕現出来たお祝いに?
「したいです!かんげいかい!!」
「ぼ、僕も…やりたいです…!」
「歓迎会ってことはお酒も出るよね!?」
「じゃあ俺は広間の飾り付けしようっと!」
「サクッと終わらせよう!!」
「「「「「おぉおおおお!!!」」」」」
やる気になってくれて良かった良かった。
スコップを取りに駆けていく皆さんを見送っていると、背中に重みが加わって胸の前で腕が交差した。
長い袖…刻燿ですね。
「どうしました?」
「えへ〜うれしぃ」
「歓迎会?」
「うん。クロちゃん」
「はい?」
「ありがとぉ」
「…どういたしまして」
「へへ〜。ボクも手伝ってくる〜」
するりと腕を離した刻燿も柔らかく笑って彼らを追っていった。
掴み所のなさそうな刀だけど皆さんは歓迎してくれるようだし、すぐに打ち解けて仲良くなってくれることだろう。
「さて、大将はこっちな」
「え?」
ただ一人残っていた薬研は私の手首を掴むと本丸の方へと引いていく。
え?あれ?私も地面埋めに…
「掌の火傷」
「!…目敏いですね」
さっきの刻燿の熱で出来た火傷が両手にあるのを見つけられてしまった。あまり掌は見えないようにしていたのだけど…薬研には通じなかったらしい。
「大将が石切丸の旦那と話してる間に、刻燿本人にも言われたんだ。俺の手当て、しっかり受けてもらうからな?大将?」
「……お世話になります」
「よし」
良い子だと言って頭を撫でられた。白衣を着て眼鏡をかけた彼は本当にお医者様のようです。
真っ黒い笑顔で言われては逆らえません。
こうして私は薬研先生の手当てを受け、歓迎会で結局は全員に火傷がバレて今後の出陣禁止令が出されてしまうのでした。
「今度からはボクが出陣するからねぇ〜」
「禁止と言われては仕方ありません。書類提出の方に専念します」
「だからって部屋に引き籠るなよ?大将」
「…善処します」