空白をやり過ごす



自己紹介後、気を失ってしまったカンナに着ていたカーディガンを掛けた。
泣いた跡がくっきりと残っており、正直痛々しい。
眠っているカンナの目に溜まっていた涙をハンカチでそっと拭う。
周りを見てみると、各自で手に入れたものを確認しているようだった。

どうやら箱と、それを開けるための鍵があるようだ。
ナオと呼ばれた赤髪の女の子が、カンナのポケットから鍵を取ると、箱の鍵穴に差し込んだ。

「よーし。危ないかも知れないから、おまわりさんに任せて。」

ケイジはゆっくりと箱を開け、そのまま黙ってしまった。

「…なにが入ってたんですか?」
「あー…見ない方がいいかも…」

しかし、ケイジが言うより早く目に入ってしまった。

「……っ、人の…頭!?」
「きゃあああああ」
「…待って、それ人形の頭じゃない?」
「…あ、本当だ。ん…?手紙も入ってる」

そこには"カラダを見つけて"と、書いてあった。

首しかない人形の身体が、このフロアにあるってことだろうか。
手も、足も…胴体も。全て違う場所にあるってことかな。
見つけて…どうなるんだろう。
しかし、このままここでずっと考えていても埒が明かないな…と思い、ハルカは話し合いが終わり次第、探索することにした。

「…どうやら探しに行くしかないみたいだねー。」
「あ…危なくないですかぁ?」
「す、数人でまとまって動こうぜ!」
「誰か…怪しい動きがないように…だろ?」
「(一人で探索しようとしてたのに…)」

うーん、これは一人では動けなさそうだ。
まぁ確かに誘拐犯側と手を組んでいる人がいるかもしれない。
念には念を、ってことか。

ハルカは小さくため息をつくと、未だに気を失っているカンナを見た。
カンナのことも心配だが、早くおうちに帰してあげたい。
そう思っていると、レコと呼ばれた女性が声をかけてきた。

「なぁ、ハルカだったよな。ハルカも私とナオと一緒にカンナを診てるか?」
「あ…いえ、私も探索してみます…外へ出る手がかりがあるかもしれないし…」
「そうか…なら、危なくなったら逃げてこいよ?ハルカが体張る仕事しなくてもいいんだからな」

レコは困ったように笑うと、ハルカの頭をクシャクシャっと撫でた。
じゃあ、気をつけてな。と言ったレコに、カンナをお願いしますと伝え、ハルカはその場から離れた。
レコさん…優しい人、だった…さて…誰と探索に行こうかな。
フラフラと歩いていると、不意に後ろから声をかけられた。

「ハルカちゃん、おまわりさんと一緒に探索に行かないかい?」
「あ…ケイジさん…」

声をかけてきたのはケイジだった。
初めて話したのもケイジさんだったし…いいかな。

「はい…よろしく、お願いします」
「よし。じゃあ行こうか」

早く人形の身体を見つけて帰りたい。
帰…れるのかな。懸念が残るが、やるしかない。
歩き出したケイジの背中を追い、ハルカは歩き出した。




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