閉ざされたその扉



ケイジと共に一通り調べたが、人形の身体らしいものは見つからなかった。
どうやら道端に落ちているわけではなさそうだ。
やれやれ、と思いながら娯楽室を再度探索していると、青い扉の部屋が入れることに気がついた。

「中に入れそうだねー」
「…入ってみますか?」
「もちろん」

ケイジがゆっくりとドアを開けると、とても広い不思議な部屋だった。
大きな絵画。何脚かある椅子。それに座る5体の奇妙な人形。

この人形は…動かせるのだろうか。
ハルカは慎重に近づき、ぐったりと座る人形に触れた。

「…あれ?動かない…」
「これは固定されてるみたいだねー」
「そうみたいですね…他は…」
「あれ?ケイジさんとハルカさん?」

他の人形も調べようとした時、ジョー、Qタロウ、カイが室内に入ってきた。
なんとも不思議なメンバーだ。
まだこの部屋を全て探しきれてないことを伝えると、みんなで手分けして探した方が早いだろうと、室内を探索することになったのだが…うーん…なんてものを見つけてしまったのだろう。
椅子を調べてみると(おそらくだが)実弾3発分とリボルバーがあった。

これは警察官であるケイジさんにおまかせすべきなのか。
むむむ、と悩んでいるとサラとソウが来たようで、みんなと話しをしていた。
…完全に相談するタイミング見失ったなぁ

仕方がない。終わるまで待つか…
そう思い探索を続けていると、絵画が目に止まった。
黒いハットを被ったスーツの男の絵。
今にも動き出しそうな絵だった。
なぜ気になったのかは分からないが、じっと見つめてしまう。

ハルカがじーっと絵画を見つめていると、誰かが肩をポンと叩いた。
驚いて振り返れば、ケイジがこちらを見ていた。

「ハルカちゃん、大丈夫かい?」
「あ…大丈夫です。なにか、ありました…?」
「いや、心ここに在らずって感じだったからね」

大丈夫ならいいんだ。
ケイジはそう言うと、ハルカの頭をくしゃっと撫でた。

温かい…大きな手。
慣れない温もりに戸惑いが隠せない。
少し照れくさそうに(表情はあまりかわってない)ケイジから離れると、先程見つけたリボルバーと実弾の話を始めた。

「さっき、拾ったんです。…どうします?」
「実弾だねー。ハルカちゃんが持っていたくないなら、サラちゃんに渡してみたらどうかな?サラちゃん、ダミーの弾を持ってたし」
「…?はい、サラちゃんに聞いてみます」

なんで、自分が持ってるって言わなかったんだろう。
不思議に思ったが、何か理由があるのかもしれない。
部屋を出ようとしていたサラの方に行こうとした時、突然部屋の入口に鉄格子のようなものが現れ、外に出られなくなった。

幸い、誰も怪我はしてなかったようだ。
外に出ていたソウは何かこじ開けれそうなものを探すといい、娯楽室から出ていった。

「まずいことになったねー」
「サラちゃん…怪我はない?」
「ああ…私は大丈夫だが…」
「本当か!」

ジョーはサラを心配そうに見つめていたが、負傷していないことを確認すると安堵の吐息をもらした。
それにしても、鉄格子とは…
どうやら閉じ込められてしまったようだ。
ソウが何かこじ開けれるものを持ってくるまで待つか、それとも他の手段があるのだろうか。
それにしても……

「タイミングが、いいな」
「何のタイミングがいいの?」

考え混んでいたことが思わず声に出ていたようで、ケイジが不思議そうにハルカを見ていた。

「ソウさんが…出てすぐに鉄格子が作動しましたよね」
「あー、確かそうだね」
「……偶然、ですよね」
「……」

ハルカがモヤモヤとしていた事を伝えると、ケイジは黙ってしまった。
偶然なのかもしれない。本当にタイミングがよかったのかもしれない。
でも、なんだろう…不思議な違和感がハルカを襲っていた。
いや、今はここから脱出する方法を考えよう。
ケイジに先程の発言を忘れるように伝えようとした時、突如男の声が室内に響き渡った。

「" おいおい、そんなに身構えるなって "」

声のした方を見ると、そこには先程気にしていた絵画があった。
まさか…絵が喋ってるの?

「" オレはこの部屋の主だ。アルジーとでも呼んでくれよ。まあ早速だが、これからゲームのルール説明をさせてもらうぜ "」
「る…ルール説明ですか……?」
「" そりゃそうだよ!ルールも知らねぇで命賭けんのかぁお前は!酔狂だねぇ! "」

命を、賭ける…?
誘拐されてから何度も聞く言葉に、ハルカは目を細めた。
アルジーは楽しそうな声を上げると、ルール説明を始めた。

「" 簡単なお遊びさ!この部屋には今、お前ら6人の人間が居るだろ。部屋を見渡せ…!空いている席は4つだ。1人はチャレンジャー。残り4人は席に座り、的になってもらうぜ "」

実弾とダミーはこの為にあったんだ…。
サラに渡そうとしていたリボルバーと実弾を見つめ、ふと疑問に思った。
6人中、1人はチャレンジャー。残4人は的。もう1人は?

「ねぇ、アルジー…」
「" ん?なんだ、ハルカ "」
「…もう1人は、何をするの?」
「" 気がついたか。残りの1人は参加出来ない。だが、楽しい仕掛けがある "」

それは何?と聞こうとした時、突如ハルカを囲うように檻が出現した。
まるで囚人を囲う牢獄のように、瞬く間にハルカを覆う。
近くにいたケイジがハルカに向かい手を伸ばしたが、檻の方が早く完成してしまい救出ができなかった。

「ッハルカ!!」
「" おいおい、死ぬわけじゃねぇんだ。そこまで焦らなくてもいいぜ "」

ケイジは両手で檻を掴み、中に居るハルカを確認した。
突然のことで驚きが隠せない。彼女は無事なのか。
いつも通りのぼんやりとした様子でケイジを見つめるハルカを見つけると、ホッと安堵のため息を漏らした。

「…びっくり、した……」
「" だから言ったろ、死ぬ訳じゃねぇんだって。ハルカは檻の中にいる。チャレンジャーが成功したら檻から出してやるよ "」
「…失敗したら?」
「" その時は…いや、今はよしておこう。まずはチャレンジャーを誰にするか決めてもらわないといけねぇ。説明はその後だ "」

説明の前にチャレンジャーを決めろというのか。
みな困惑の色が隠せずにいる。
しかし、決めないことには話が進まない。

「ハルカ、少しだけ待っててくれ」
「……ごめんなさい」
「いや、ハルカさんが謝ることじゃねーっすよ」

サラとジョーが落ち込んでしまったハルカを励ましている。
その姿を見たケイジは檻から手を離すと、深く息を吐きサラたちに向き直った。

「さて、話し合いを始めようか。…ハルカちゃんを、助けたいしね」

ケイジは首に手を当てながら、チャレンジャー決めの討論を始めた。




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