しずかな、しずかな夜だった。

「蘭たん、眠れないの?」

 わたしがそう尋ねると、同じベッドで横たわる彼は、体制を変えて、わたしの身体を包み込む。彼の腕はひんやりとしていた。それが心地よくて、わたしは彼の胸へと飛び込むのだ。

「どうしたの」
「……別に」
「寂しくなっちゃった?」
「子ども扱いすな」

 否定をするけれど、彼は時々、幼い子ども見たいな表情をする時がある。いつもは何も感じていないみたいなポーカーフェイスで、年齢よりもずっと大人びた表情をしているのに、本当にふいに、迷子になった子どもみたいに心細げな顔をする。わたしはそれを見るたび、彼はとても孤独な人なんだと、思い知る。
その孤独を埋めてあげたくて、ぎゅっと彼にしがみつく。

「蘭たん」
「ん?」
「大丈夫だよ」

 わたし、どこにも行かないよ。
 人生は孤独との戦いだ、なんて言うけれど、本当にその通りだ。今だってこんなに近くにいるのに、わたしたちは寂しい。きっとお互いに。

「わたしはずっと蘭たんの傍にいるよ」

 だから、大丈夫だよ。蘭たんは何も言わない。その代わり、片方の手が取られ、そのまま指を絡められる。彼なりの愛情表現だ。とても不器用だけど、ちゃんとわかる。わたしたちはパズルのピースのように、お互いの足りない部分を求めあっている。求めあうからこそ寂しいんだ。「ありがと」とつぶやく彼の声と共に瞼を閉じる。ああ、このまま目が覚めなければいいのに、なんて。


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