最大限の譲歩はキレイに終わらせること。
傷付くのは自分だけで良かった。
何をしても取り繕えないほどわたしは最低だった。
でも、そんなわたしを嘲るかのごとく、あなたと一緒にいた日はいつも空は雲ひとつなくて陽の光がガラスに反射してキラキラ光っていてとても綺麗だったのを今も思い出す。

結局わたしはわたしだけ救おうとしていた。
面倒な感情も、ぐちゃぐちゃな悩みもわたしはキレイに捨てただけで
肝心な辛いところはすべてあなたに背負わせてしまった。
そんなつもりじゃなかったと
わたしが悪いわけじゃないと
自分を正当化したかった。

愛されることは温かくて心地よくて穏やかなのに
愛されることは何故か、辛い。

ごめんね、ごめんね。口をついて出るのは謝罪の言葉だけ。
まるごと包み込んでくれるあなたの優しさを、愛情を、受け止められるほど純粋じゃなかった。

あなたでない、あの人がどうしてもどうしても消せなかった。
心の中で本当に愛されたいと願うのはあなたでない、あの人。

いいことがあったとき、つらいとき、話を聞いて欲しいのは、慰めたり励ましたりし合いたいのは、笑いかけてもらいたいのはあなたでない、あの人だった。

もやもやした気持ちのまま
あなたの優しさに甘えて、迷惑だけかけて
辛い思いだけ、否、イライラするような思いだけあなたに残してしまった。

あなたの隣にいたらきっと幸せだったでしょう。心からそう思えるのにそれはできなかった。


「ごめん、本当に、ごめんなさい」
「もう、いいから。俺たちってそんなに浅い関係だったんだね」

違う。違わないけれど。
でも、そうしたかったわけじゃない。
望んでなんかいなかった。
できることならずっと一緒にいたかった。

でもできなかった。わたしがいけない。わかっているの。

「…………」

ありがとう、が不似合いなほど終わりはあっけなく、温度がなかった。

もしも
調度良い距離を保ち続けていたら
友達という枠を超えなければ
いまもあなたを傷つけずにいられたのに。

それでも、
季節が変わるのに置いて行かれたままのわたしに手を差し伸べてゆっくり歩いてくれたあなたに救われたのは事実で、あなたの隣で幸せになりたいと思ったのも事実。
きっと信じてはもらえないだろうけど。

差し伸べてくれた手を払い除けたのはわたし、
優しい心を傷付けたのもわたし。

でもあなたのなかのわたしはすぐにむかしになるから。
あなたのなかのわたしってきっとそんなもの。わかってる。

忘れてしまう前に、
ちゃんと言っておこう。

"じゃあね"







サカナタクシー

title:)Rachel
updated:)2015/01/30
reupdated:)2016/03/14
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