マシュマロココア。
抹茶フラペチーノ。
ガトーショコラ。
シフォンケーキ。
スフレ。

甘いものなら何でも好きだ。
口に入れるだけで幸せな気分になる。
口に入れた瞬間広がる甘さ。
どんな鬱憤もそれだけで吹っ飛ぶ。

「いつか糖尿病になるぞ、お前」

彼氏の口癖だ。
でも、わたしはこんなに甘いものが好きなのに体型は標準より痩せていると思う。
彼氏もいるし、いちおう、気にしている。
毎日ストレッチしたり筋トレしたり。
最近はヨガにもはまっている。

だからたぶん、大丈夫。
心配ない。
そんなことを思いながらマカロンを口に入れる。
ああ、甘くて美味しいな。

ふと隣から注がれる視線に気付く。

「なんで笑うー!」
「いや、幸せそうだなあと」

そんなふうに笑うあなたのほうがずっと幸せそうに見えるけど。
なんて言えないけど。

澄んだ瞳、切れ長の少し下がった目尻、綺麗な形の口。
優しく微笑まれると照れ臭くてつい目を逸らす。
そんなわたしを見て、またクスッと笑う。
悔しいからマカロンをぱくぱく食べる。

「ほんとおもしろいな」

また見つめられ、また恥ずかしくなって。
口の中に広がる甘い味も忘れてしまう。
せっかく美味しいマカロンなのに。

「俺にもマカロンくれよ」

そういえば、せっかく家まで来てくれたのにわてしはひとりでマカロンを食べ続けていた。
もてなしひとつしていなかった。

黙ってマカロンの乗ったお皿を差し出す。
ぎこちなさにまたあなたは笑う。

やっぱり照れ臭いからお茶でも淹れよう。
立ち上がってキッチンに向かう。
向かってる間も後ろに視線を感じた。

「はい、紅茶」
「どうも」
「お砂糖とかミルクは自分で入れて」
「ん」

ぼうっとして
マカロンを食べて
ときどき隣をちらっと見る。

幸せっていうのかな。
甘いものを食べてるときも幸せだけど
こうして大好きな人が隣で笑っていてくれること以上の幸せはない。

そんなことを考えていたら
不意に手を握られた。
びっくりして思わず目が合う。

「サプライズ」

そう言ってあなたは握っていた手をそっと離して、
にこにこしている。

わたしは握られていた手を見つめた。
薬指にキラキラ光るものがはまっていた。

「これ……って」
「エンゲージリング」
「うそ……」
「受け取ってくれる?」

嬉しくて、
思わず視界がぼやける。
ゆっくりと頷く。

「よかった。お誕生日おめでとう。
これからもよろしく」

ぼやけたままの視界なのに
やっぱり照れ臭くて目を逸らす。

「目を逸らすなってば」

笑いながらわたしの口にマカロンをひとつ食べさせた。

「甘いもの食べたらもやもやはぜんぶなくなるんだろ。
恥ずかしいのも消えるだろ」

口の中に広がる甘い味。
目の前にいる大好きな人。

とろけるような時間。





キャラメルのようなにおい

title:)Rachel
updated:)2014/11/08
reupdated:)2016/03/14
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