愛しい背中 - ネイビーブルー

声をかける勇気なんてなくて、いつもただ後ろ姿ばかり見ていたんだ。
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クラスでもそこまで目立つ方じゃないし、ほかの人より特に秀でたものがあるわけじゃない。身長だって平均くらい。この気持ちがなかったらきっとこんなにあの人のことを見ていないんじゃないかなって思うくらい至って普通のクラスメイト。ただちょっと笑顔が素敵。ただちょっと気さくな人。ただちょっと気になる人。話しやすいし、冗談も言ってくれるし、優しいところもある。去年たまたま一緒の委員会だっただけ。でもそれがなかったらいまこんな風に思ってない。人というのは関わってみて初めて見える部分が多い。先入観とか噂とかその人のイメージをコントロールしてしまう何かがあったとしても実際に関わってみるまでそれが本当なのかはわからない。関わったからといってその人の全部がわかるわけではないけれど、もちろん。少女漫画みたいなときめきがあるわけじゃないし、恋愛もののドラマみたいな展開にもならない。普通に、そのへんに転がっている感じ。何もできないことは辛いことじゃない。ちょっとしたことで楽しくなったり、嬉しくなったりしているだけで普遍的な学校生活に色が付く。少しだけわくわくする。それだけで結構すごいことだと思う。気持ちが伝わらなくてもいい、見てるだけでいい。なんて本当は建前で両思いになれたらそれはいちばん幸せなことだけど今は、面と向かって話す勇気も話題もないからまた後ろ姿ばかり見てるんです。