二人


永きに渡り、平穏を保ち続けている小さな国、エストレラ王国。
エストレラ王国の民は皆、魔力を宿している。

そして最も大きな魔力を宿すのが王族であった。
王族は、その大きな魔力によって、エストレラの礎とも呼ばれる「星の石」を守護、監視する使命を持っている。

星の石が攻撃を受けぬよう、また、悪用されることのないよう、王族が自らの身を呈して守っているのであった。
星の石の在処は、王族の中でも「適合者」にしか分からない。

適合者は、同時代に2人存在する。
適合者が、その命を失った時、新たなる適合者が選ばれる。
そして、適合者となる者は、共通した夢を見る。すなわち、夢を見たものが、適合者という訳だ。


そして今、エストレラ王国の2人の適合者が、老いと病でその命を尽きようとしていた。

現在の適合者の死は、新たな適合者の出現を意味している。

そして、ちょうど同じタイミングで、
第15代国王アステルと、妃レイアは、双子を授かったのだった。


「もしかしたら、この子達が適合者かもしれませんね」
「まあ、そういう可能性もあるだろうが……まだ幼いこの子達に、重荷を背負わせてしまうのは心苦しいことでもある」

アステルは、王宮魔術師であり、自らの側近であり、そして学友でもある、レネになんとも言えない表情を向けた。

「しかし、適合者は、その使命ゆえに星の石の御加護を受けることが出来る、という説もあります。実際のところはよく分かっていませんが……文献などにも記されていませんし、適合者については、多くを語ってはならないことになっていますから」
「ああ、そうだな……」
「まだお二人が適合者になると決まったわけではございません。それに……王様自身が適合者になることも十分有り得ます。もちろん、王妃様も」
「それもそうだ。それはそうと、レネ。私や王妃しかいない時は敬語をやめてくれと頼んだはずだが」
「そうは言われましても、身分の違いは弁えておきませんと……」
「全く……」

アステルは苦笑した。

「王妃は今、まだ休んでいるのか」
「はい。出産を終えて、体力がまだ回復し切っていないようです」
「そうか」
「ですが心配には及びません。医術師によると、数日もすれば回復するだろうと」
「わかった。それで、あの双子はどうだ」
「はい、お二人も問題ありません。元気よく泣いて、ぐっすり眠って、健康そのものであるようです」

レネはアステルを安心させようと、笑顔でそう言った。

「2人の命名式を執り行わねばならないな。準備をよろしく頼むぞ、レネ」
「お任せ下さい」

そう言い終わると、レネは早速、命名式の準備に取り掛かるのであった。





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