翳り



アステルとレイア、そして王宮魔術師、王宮騎士団により、
ノーチェの反逆者達は、全員捕えられることとなった。

魔術師の魔力の源は、硝子のような石の欠片として、取り出すことができる。

今回の件で捕えられた者達の魔力の源は全て王宮魔術師によって取り出され、厳重に保管されることとなった。

「王様、今回の件に関わった者達は、いかが致しましょう」
「……ひとまず、私が直々に話を聞く。彼らへの処罰はそれからだ」
「承知いたしました。……それと、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「言ってみよ」
「……クレル様は、どこへ行かれたのですか」
「……お前は確か、クレルの部下のレーヴと言ったか」
「はい」
「クレルは暫く此処には戻らない。レーヴ、お前が王宮魔術師を取り纏めよ」
「……承知いたしました」

レーヴは、王がクレルと同様のことを告げたので、これ以上詮索しても、今は無駄だと感じ、自分のやるべきことに目を向けることにした。

レーヴとアステルが話し終えた頃、扉の外からレイアの声がした。

「王様、よろしいでしょうか」

「……ああ。レーヴ、下がって良い」
「はい」

レーヴと入れ替わりで、レイアが部屋に入ってきた。

「レイア、君の言わんとすることは分かっている。ソアレとエレナのことだろう」
「はい。それと、クレルとレネのこともです」

レイアは冷静だった。
真っ直ぐにアステルを見つめている。

「……ノーチェの民が謀反を起こすことは、多少予想がついていた。そしてノーチェの民は、独自の魔術を使い、こちらとしても、犠牲を出さずにいられるか、わからなかった。
ノーチェの民が狙っているのは新たな適合者。……つまり、我が子達だ。
もし、ノーチェの民が攻め入ってきたときは、回避できぬときは、クレルがソアレを、レネがエレナを王宮から脱出させるように命じていた。
ノーチェの民が落ち着くまでは、王宮にいるのは危険だと判断し、王国民に紛れてもらうことにした。
時が来たら、戻るように、と」

アステルは一気に話し終えた。
淡々とした口調で。

「……なんとなく、予想はしておりました。あの子達の無事を祈るしか、今はできないということですね」
「そうだな……」
「ノーチェの民以外にも、エストレラに不満を抱く者達がいるのではないでしょうか」
「そう思うのか」
「……なんとなく、そんな気がします。ノーチェの民だけが、エストレラ王国に不満を持つとは思えません。大きくはない国でも、それなりの国民がいて、それなりの歴史もあるのですから」
「そうだな……このようなことを何度も繰り返したくないな」
「はい。エストレラの平穏のためにも」



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