見上げた顔は


「花太郎ー、みーっけた!」

愛しの花太郎の姿を見つけ、後ろからガバッと抱きついた。失礼にも、花太郎は悲鳴にも似た声をあげた。

「おっはよ」
「おおお、おはようございます…」
「今日も仕事?」
「はい」
「ふーん…」

花太郎の肩に顔を埋めてみると、自分の方が身長が高いから少しだけ前屈みになった。

「つまんないなぁ。いっつも仕事で。遊ぼうよう」
「また休暇が取れたときに…」
「さぼっちゃおうよう」
「ダメですよ。患者さんはいっぱい居るんですから」

真面目なところはかっこいいなぁ、とか思ったりして。

「私も花太郎依存症だから看病してほしいなぁ」
「そ…そんな病名聞いたことないです……」
「だって私しかならない病気だもん」

抱き締める腕に力をいれる。花太郎は苦しそうに、うっ、と言った。

「いつお休みとれるの?」

花太郎の前に回り込んでまたぎゅっと抱き締める。ボフッと花太郎が胸に埋まった。

「…!!」

苦しそうなくぐもった声が聞こえる。花太郎は離して欲しいのか、私の背中を軽く叩いた。力を緩めると花太郎はブハッと顔を上げて息を吸った。

「く、苦しいじゃないですかっ」

花太郎の顔は真っ赤になっていた。

「花太郎…」
「はい?」

花太郎の見上げた顔は、真っ赤だった上に目が潤んでいて萌えた。つい、両頬に手を当てて、噛みつくようにキスをした。んんんん、と花太郎の声が漏れる。
たっぷり堪能してから唇を離すと、花太郎の顔はこれまでにないぐらい可愛くて、

「優さん…」

名前まで呼ばれたものだからもう止まらなくなった。

「やっばい、好きすぎる…」

何度も何度も唇を重ねた。仕事に遅れた花太郎が伊江村さんに怒られたのは言うまでもない。