無愛想


「ちょっ…、優さん!待って下さい…」

今日は珍しく優さんと二人で任務に来ていた。優さんは歩くのが速くて、僕はおいていかれそうになる。

「花太郎…歩くの遅い」
「すみません…」

僕の身長が低くて足が短いせいで、優さんと歩いているとどんどん距離が開いていく。僕もこれでも男なのに、悲しい現実。

「あんまり遅いなら、置いてく」
「えっ、そ、そんなぁ」
「嫌なら、ちゃんとついてきて」

任務で真剣になっているせいか、いつもよりも冷たく言い放たれる。それがなんだか寂しくて、悲しくなってくる。まぁ、冷たくされるのはいつものことだから慣れているんだけれど。

「うぅ…」

それでも、歩いていると少しずつ離れていくのが、寂しかった。

「…もういい。ゆっくり行こう」

しばらく進むと、優さんは振り返って僕にそう言い、少しだけ歩くスピードを落としてくれた。

「すみません…」
「べつに。そんなに、急がなきゃいけないわけじゃないんだから」
「…すみません」

わざわざ歩くのを遅くしてもらったのに、それでも僕は追いつけなかった。さっきまで小走りだった疲れが出てきたせいだ。さすがに体力つけないと…。

「…花太郎」
「は、はいぃっ…」

ドスのきいた声で名前を呼ばれてドキッとする。いい加減、僕のとろさに呆れただろうか。苦しくて、涙が出そうになった。

「速いなら速いって、ちゃんと言え。もっと遅くしてほしいなら、そうやって言え」
「ごっ…ごめんなさい」
「ふん…」

優さんは怒ったような不機嫌な顔で歩き出した。僕は足手まといにならないように、すぐに追いかけた。

「優さん、あのっ…」

ちょっと遅くして欲しくて、優さんの服の袖を掴んだ。

「な…何だ」
「あの…僕、歩くのも走るのも遅いんで…もうちょっと、ゆっくり…」
「…」

優さんは数秒止まって、また歩き出した。

「わかった。じゃあ、花太郎に合わせてやる。それでいいな」
「あ…はい」

頷いたら、袖を掴んでいた僕の手は優さんの手に握られた。

「…え」
「これで、花太郎を置いていくことはないだろ」

僕らは手を繋いだまま歩いていく。優さんの顔を見てみれば、照れたように顔が赤くなっていた。

「…何だ。見るな」

睨まれてしまったけど、さっきまでのような怖さは感じなかった。

「あの、ありがとうございます」
「…おぅ」

ぎゅ、と手を握り返すと、頭を軽く叩かれた。

「普通にしてろ、ばか」
「…すみません」

照れた優さんは、ちょっと可愛いな、と思った。