▼▲▼
「あれ?花太郎、背縮んだ?」
隣を歩いていてふと気がついたことを口にしてみた。すると花太郎はショックを受けたような顔で私を見上げた。
「僕は縮んでなんかないです!」
「そう?じゃー私が伸びたかな」
花太郎の頭に手をぽんぽんと乗せる。身長差はたぶん10cmくらいだろうが、花太郎は悔しそうだ。
「いつまで成長続ける気ですか…」
「さぁ?まだまだ若いからね、しょーがないね」
「僕全然伸びないんですけど…」
「もうお年ですからねー」
「同期なんだからそんなに変わらないと思うんですが」
花太郎は私を見てため息をつく。低身長なのがそんなに嫌なのだろうか。
「そんなに気にすることじゃないでしょ」
「身長比べてくるの優さんの方じゃないですか…」
「からかうのが楽しいだけだよ。別に花太郎が小さくたって私は花太郎のこと好きだし」
「…そういうこと言われると、言い返せないんですけど」
花太郎は頬を染め目をそらす。こんなに可愛くてあざとい反応をできるのなんか花太郎くらいなんだから、身長が伸びたらもったいない気がする。
「それにほら、このくらいの身長差の方がいじり甲斐があるし!」
花太郎の前に回り込んで、丁度良い高さにある額にキスをした。期待通りに花太郎は目を丸くして、更に頬を赤くする。いつまでたっても可愛らしい反応を見せてくれる花太郎に胸が高鳴る。
「誰かが見てたらどうするんですか…」
「バカップルって思われるだけじゃない?」
「…恥ずかしいです」
「照れ屋な花太郎も可愛いよ」
照れるとすぐに顔を赤くする。そんな姿が可愛くて、他の誰にも見せたくなくて、私は花太郎を独占する権利を得た。
「早く来ないとおいてくよ〜」
余裕ぶってはいるが、あんな恥ずかしいことをして冷静でいるのは難しい。顔を見られないように先を歩き階段を下っていく。すると途中で袖を掴まれて、動きを止められた。
「なに?」
振り向いて見上げると、恥ずかしそうに近づいてくる花太郎の顔があった。予想外な花太郎の行動に驚いて固まったら、一瞬唇に触れる柔らかい感触があった。
普段は花太郎からしてこないし、花太郎に見下ろされることなんてないし、慣れないことをされたせいで恥ずかしくなった。
「…照れ屋な優さんも可愛いですよ」
顔を真っ赤にしながらそんなことを言ってきた。そう言う割りに花太郎の方が照れていて、急いで階段を駆け下りて行った。
「待って!おいてかないでよ!」
可愛いのは花太郎の方だというのに。そうは思うが、大胆なことをしてくる花太郎も悪くないな、と思ってしまう私がいた。
▲▼▲