冷温


「隊長…」

冷徹で冷静で冷血で冷酷で冷淡な朽木隊長。そんな隊長は今日も私に重労働をさせる。
か弱い私が運ぶには、どう考えても重いダンボールを私に運ばせてくる。血も涙も無い酷い隊長だ。

「朽木隊長…」
「なんだ。うるさいぞ」
「…すみません」

ここから隊首室までの道のりはまだまだ長い。それなのに隊長は荷物を私に持たせっぱなし。隊長は何も持たずに、ただ隊首室に向かって歩くだけ。少しの間でも持ってくれたら私は天にも昇るくらい嬉しいのに。とは言っても、ここが天みたいなものなのだけれど。

「うぅ…」

荷物が重いせいで、腕が、筋肉が、震えてくる。チワワのようにプルプル震えてくる。私の腕は限界に近い。このまま荷物を落としたら怒られるだろうか。

「静かに歩けぬのか」
「…すみません」

こんな冷たくてクールでコールドな朽木隊長だけど、逆らわないのは私が朽木隊長を好きだから。ただ、それだけの理由。
隊長が私のことをどう思っていようと、どうも思ってなかろうと、隊長の役に立てれば私は満足なのだから。こうして一緒に歩けるだけでも、幸せだと思う。…辛いけど。

頑張って歩いて朽木隊長の横顔を見上げてみる。凛々しい顔が素敵すぎて見とれてしまい、こけそうになった。

「…何をしている。落ち着いて歩け」

それでもやっぱり隊長は荷物を持ってはくれず、注意するだけだった。少し寂しいけど、こっちに目を向けてくれたことが嬉しかった。


「はー」

歩き続けてたどり着いた隊首室。やっと私の腕は解放されるのかとホッとした。

「優」
「ふへっ?」

急に名前を呼ばれて、驚いて顔を上げる。朽木隊長は私の頭に手を置いて、優しい手つきで頭を撫でてくれた。

「ご苦労だった。わざわざこんなもの運ばせてしまってすまなかったな」

隊長は隊首室のドアを開けて、私の持っていたダンボールを軽々と持ってくれた。突然温かい隊長になって、どきっとする。

「いえっ。私で良ければいくらでも働かせて頂きますよ」

頭に残る隊長の温もりを幸せに感じながら、深々と頭を下げた。

「ならば、茶でもいれてもらおうか」
「は…はい。喜んで!」

大好きな隊長のためならば、何だってさせて頂きます。