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「あーあ…」
今日、私が見た天気予報では曇りで、雨は降らないはずだった。なのに只今、ちょうど下校の時間に雨が降り出した。こんなことなら図書室なんて行ってないで早く帰るべきだった。
「やっちゃったなぁ…」
携帯電話でここの天気を調べてみれば、雨雲が通り過ぎるまで二時間ぐらい必要だった。この予報を信じて良いのかわからなかったけど、傘を持っていない私は学校で雨宿りをするほか無かった。
雨が止んだらすぐに帰れるように、靴も履いて外に出た。屋根の下で座り込んで、さっきまで読んでいた本の続きを開いた。
「あれ?優、何してんの?」
顔をのぞき込んできた千鶴。なにやら顔が近い。
「雨が降ってきたから…、止むの待ってるの」
「うわぁ…大変ね。私も傘さえ持ってれば優と相合い傘…、愛愛傘で家まで送ってあげたのに」
「…傘無いの?」
「私自転車だからね」
残念。というか、相合い傘を言い直す必要があったのか。
「それじゃ、風邪ひかないようにね!」
千鶴は駐輪場の方へと走っていった。もう帰れて良いなぁ。私も帰りたい…。
しばらくボーっと待っていたら、一人の足音が私の横を通るときに立ち止まった。見上げれば、メガネミシンと噂されるメガネが居た。
「雨竜…くん、」
「…どうしたんだ?そんな所で」
「雨で…、傘、持ってなくて…。だから、止むまで待つの」
「へぇ…。大変だね」
私が大変だからといって、別に何をしてくれるわけでもなく、雨竜くんはただ傘を開いた。
「…じゃあね雨竜くん。せいぜい風邪ひかないように気をつけてね」
皮肉っぽく言ってみる。そしたら雨竜くんはため息をついて、困ったように頬をかいた。
「…傘、入るかい?」
「いいの?」
「…嫌ならいいけど」
雨竜くんは傘を上に向けて外に出てしまった。
「待って…」
カバンを持って立ち上がって、勢いで雨竜くんの傘の下まで飛び込んだ。
「入るなら入るって始めから言えば良いのに…」
「ありがとう雨竜くん。これで私は風邪をひかずにすむよ」
「…そうかい。それは良かったね」
「それに、すごく嬉しいよ。ありがとう」
ちらっと横目で見てみれば、雨竜くんは頬を薄桃色に染めていた。そんな照れた顔が可愛くて、思わず笑ってしまった。
「…何笑ってるんだよ」
「いいえ。なんでもない」
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