みんな大好き


「ねぇお腹空いたー。ごはんー」
「はいっ!ただいまっ!」

私は滅却師であり、そこそこ力もあるはずだった。だけどユーハバッハ様には選んでもらえなくて、聖文字は与えて貰えなかった。

「バンビちゃんたちどこ行ったか知らない?」
「あれっ、いらっしゃらないのですね。ご飯、冷めちゃいますね…」
「リルもいないし、ボクが全部食べちゃおうかな」
「…体重とか、お気になさらないのですか?」
「本気にしたの?冗談に決まってるじゃん」

だから私は、見えざる帝国では控え目に、皆の世話をすることにした。きっと私が戦場に立つまでもなく、皆が勝つに決まっている。聖十字騎士団が、負けるわけがない。そこそこ強いと思い込んでいたこの私よりも強い人たちで編成されているのだから、みんな相当強いに決まっている。

「暇だし、君も一緒に食べる?」
「ご、ご一緒してよろしいのですか!?」
「いいよ、ご飯余っちゃうし。バンビちゃんの分から食べて」
「…はい。いただきます」

バンビエッタさんたちが帰ってきたらまた新しいものを用意しようと心に決め、私はジゼルさんと一緒にご飯を食べることにした。
いつも遠くから見ていた人と、偶然にも一緒に食事をできるだなんて。近くで見てもジゼルさんは美しくて、可愛くて、ドキドキした。

「じろじろ見ないで欲しいんですけど?」
「あっ、ごめんなさい」

視線がばれていて恥ずかしくなる。例え私がどきどきしても、ジゼルさんはどう見ても女性だ。私が抱くこの感情がおかしいに決まっているんだ。

「…君さぁ、いつもボクらのこと見てるよね。それとも、ボクらじゃなくて、ボクのことだけ見つめてたの?」

指摘され、顔が熱くなる。初めこそは彼女たち五人が可愛くて、せめてお友だちになりたいだなんて夢を見ながら眺めていた。だけど気が付いたら、ジゼルさんのことを注目していることに、ついこの間気がついた。

「ボクのこと好きなの?」
「え、あ、あの、好きか嫌いかでいえば、もちろん好きです!私、ここの人みんな好きですので」
「そういうこと聞いてるんじゃないんですけど?もう一度聞くよ。ボクのこと好き?」

ジゼルさんのつぶらの瞳で見つめられる。柔らかい笑顔が可愛くて、私は素直に頷いてしまった。

「ご飯食べるのやーめた。遊ぼうか」
「へ?」
「だってボクのこと好きなんでしょ?」

ジゼルさんはいつになくいやらしい笑みを浮かべたかと思うと、私の腕を痛いくらい掴んで引っ張った。

「あ、あのっ、どこへっ」
「ボクと二人っきりになれるとこ」

二人っきり?いやいや、二人っきりになって何するつもり…いや、これも私の思考が汚れているからドキドキするだけ?や、でも、二人っきり?え?

「ほらここ」

きっとここはジゼルさんの自室だろう。部屋の中は薄暗く、装飾も黒かった。とても、白を基調とする滅却師の部屋とは思えなかった。

「ボク、こんな見た目だから、女の子に好きだなんて思われることなかったんだよねぇ。もちろん、バンビちゃんたちにも、冗談でも言ってもらえなくて」

ジゼルさんは喋りながら鍵を閉める。少しだけ怖くて逃げだしたくなる。でもジゼルさんの厚意を無駄になんてできるわけがない。

「それなのに、君は変わってるね。ボクの能力にかかったわけでも何でもないのに、好きだなんて。頭大丈夫?」
「わっ」

どさっ、とベッドに放り投げられ、ジゼルさんは倒れた私の顔の横に手をついて、私を見下ろした。

「でもね、生きてる奴に好かれて、不思議ですごく楽しいよ」

ジゼルさんはそのまま私に覆い被さり、唇を重ねた。食べられてしまうんじゃないかというくらい唇を舐められたりあまがみされたりして、しまいには口内にまで舌を入れられた。子供みたいな顔してるくせにこんなに積極的だなんて思っていなかった。口の端から、どちらのものかも解らない唾液が垂れた。

「はぁ…生きてる奴にこんなに欲情するなんて、初めてだよ」

生きてる奴に?
そういえばジゼルさんの能力って、ゾンビだっけ。死体に関わる能力だから死体ばかり見てきて、そっちに興奮する性癖でも持っているのだろうか。

「もったいないから、殺さないように気をつけるね」

もしかして、欲情できなかったら私はこの場でゾンビにでもされていたのだろうか。そう思うと少し怖くて、ぞくっとした。
その恐怖の寒気をかき消すかのように、今度は優しくキスをされた。でもジゼルさんの手は私の体の上でごそごそと動いていて、服のボタンを開けられたようで肌寒くなった。

「真っ白い肌…。傷付けたくなっちゃうよ」
「あっ…」

ジゼルさんは私の胸の先端を口に含み、舌でころがした。その間にも体をまさぐられ、器用にもパンツを剥ぎ取られた。スカートでただでさえ風通しが良かったのに、布が何も無いせいですーすーした。

「じ、ジゼルさん…」
「なぁに?もう欲しいの?」

ジゼルさんはごそごそと動いて、スパッツを脱いで放り投げた。そして私の脚の間に割って入ってきた。

「ちょっと〜さわる前からこれ?えっちだな〜」

秘部を指でなぞられるだけで、いやらしい水音が聞こえた。恥ずかしさで顔が熱くなった。

「これじゃあきっと、指じゃ物足りないよね」
「…へ?」

私は今何をされているのだろう。何か熱いモノが体にあてられて、それが今にも私の中へ入ろうと押し付けられていた。

「ジゼルさん…?」
「いくよ」
「えっ、や、」

抵抗するための手はベッドに押さえ付けられていて、もがいている内に異物が中に入ってきた。ジゼルさんは女なのに、何を入れられているというのだ。

「あはっ…生きてる奴の中ってこんなに温かいんだ?気持ち悪いなぁ」
「や、やだ、なんで、」
「え?だって、ボクのこと好きなんでしょ?えっちして何の問題があるの?」
「お、男…」
「男女でえっちするの、普通のことでしょ!」
「ひゃあっ」

奥まで貫かれ、初めての感覚に頭がやられそうになる。ジゼルさんが動くせいで嫌な水音が聞こえるし、肌のぶつかる音まで鳴らされる。
私はジゼルさんは女だと思っていたのに。男女でするのが普通なのも解るけど、騙されていたままやられてしまっていることが嫌だった。性別だって打ち明けて欲しかった。

「今まで…女性の死体で、こういうことを…」
「そうだよ。生身の体温、嫌いだもん。それにボクのこと気持ち悪がるし。でも君は、嫌じゃないんだよね?好きなんだよね?だから、これからも殺さずに、可愛がってあげるよ!」

断ったら殺される。だったら、素直にジゼルさんに従おう。少なくとも顔は、見た目は私の好みなんだ。殺されるくらいなら、死ぬまで抱かれ続けよう。

「まぁ、間違って殺しちゃっても、ずーっとボクのお人形にするんだけどね」

好きだと言ってしまったばっかりに、私は生きていても死んでもジゼルさんの人形であり続けなければならないのか。

「大好きなボクと死んでも遊べるなんて、光栄でしょ?」
「んっ…あ、」

死体なら誰でもいいくせに。と言う前に中に出されてしまって、反論する気も失せてしまった。
そういう身勝手なところが、大嫌いです。