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俺がいつものように1人楽しく紅茶を飲んでいたら、近所のうざい奴がやってきた。
「なんだよいつもいつも。俺は忙しいんだぜ」
「私は暇だから美味しいケーキ作ったんだよ!」
「お前の料理が美味かった記憶は無いぜ」
「料理は不味くてもお菓子は美味しかったりするんだよこれが!」
優は自信満々で、箱からケーキを取り出した。
「きゃー美味しそう!いただきます!」
ホールケーキなのに、優は1人ですぐにそれを食べ始めた。
なんだよそれ。俺にくれるために持ってきたんじゃなかったのかよ。
「うん、美味しいかも!」
「けっ…」
目の前で食いやがって。くれるわけでもないなら見せびらかすようにして食うのはやめてくれ。
「ん、ギルどうしたの?お腹空いたの?」
もぐもぐしながら無邪気な顔で聞いてきた。目の前でそんな美味そうなケーキを美味しそうに頬張られたら腹も減るっての。
「食べる?あげようか?」
「いいのか?」
「一口だけだよ?こんな美味しいもの、ギルにいっぱい食べさせるわけにはいかないからね」
優はそう言って、一口分をフォークですくって俺の前に突き出した。
「はい、あーん…」
あーんって…な、なんで俺がそんな恥ずかしいことをしなきゃいけないんだ。いや、でもこいつの作ったケーキなら食いたい。
誰も見ていないし、べつに一口ぐらいなら良いかと思って口を開けた。
「あー…」
ぱくっとそれに食らいついてみる。甘い味が口の中で広がってスポンジもしっとり柔らかくて、すげぇ美味かった。
「ちくしょう。美味いぜ…」
「ふふん。私の実力をなめちゃいけないんだからね」
優は嬉しそうに笑ってまたケーキの続きを食べ始めた。
うん、食べ始めたんだぜ。俺が今くわえたフォークで。
よく考えれば、というかよく考えなくてもこれは間接ちゅーとかいうリア充イベントなんじゃないか。
「何見てるのギル。まだ食べたいの?食いしん坊」
もぐもぐと食べ進めている優は何てこと無い顔をしていた。
そりゃ食べたくないって言ったら嘘になるぜ。でも食べたいって言ったら…ほら、また間接ちゅーとかいうあれが起きるだろ。気付いちまったら食いたいとか言いにくいんだぜ。
「えっへっへ。食べたいんでしょ?我慢せずに言えばいいんだよ」
優はまたさっきみたいにケーキを俺の口元まで持ってくる。こんなの誰かに見られたら恥だぜ、とか思いながらも、欲望に負けた俺はケーキを食べた。
「ふひひ…。楽しいね、こういうの。間接キスっていうんでしょ?」
俺は今口に含んだ紅茶を吹き出しそうになった。
なんだこいつ解っててやってたのか!?
「やん、照れちゃってさ〜。ほーら。あーんして」
と、俺の好物である苺を差し出して言ってきた。
俺はそれを我慢できるわけもなく、その苺に食らいついた。
「どう?」
「…美味いぜ」
「こんなの二人じゃなきゃ楽しめないんだからね」
そんなのわかってるぜ。さっき一人で居た時間なんかどうでもよくなるぐらい、うきうきしてる自分がいる。
「だからさ、ギル」
「ん」
「一人楽しすぎるぜ、なんていつまでも言ってないで、私と二人で一つになってくれないかな」
「…考えとく」
二人楽しすぎるぜ。ってのも、なかなか良いモノなのかもな。
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