夢にまで見た

「ジュンくん…」

愛しい人が俺を真っ直ぐ見つめて名前を呼ぶ。見るからに柔らかそうな桃色の唇に吸い付けば、俺の首に腕を回して体を寄せて、もっともっととねだってくる。

「そんな焦らなくても、可愛がってあげますからねぇ」

ぐしょぐしょに濡れたそこに、今にも暴発しそうな自身をあてがえば、滑りが良くて体重をかけたら奥まで呑み込まれた。きつめに締め付けられてイキそうになるのをぐっと堪え、愛しい顔を見下ろした。

「絶景ッスね…」
「ジュンくん…好き…大好き」
「えぇ、俺も、愛してますよ」

ぬるぬると腰を動かせば、それにあわせてわずかに可愛らしい声を漏らす。

「もっと、声出していいんすよ」
「んっ…う、うっ、」
「我慢しないで」

動きを激しくすれば、口許を手で隠しているにも関わらず大きめの嬌声が聞こえた。愛しい声をもっと聞きたくて強めに腰を打ち付ければ、我慢できない様子であんあんと喘いでくれて、俺まで我を忘れそうになる。

「あっ、き、きもちいぃ…!しゅき、しゅき…!」
「はぁっ…いきますよ、もっと気持ち良くなりましょうねぇ、優さん…!」

責任なら俺がとる。俺の愛ごと全部受け取って欲しくて、全部愛しい人の中へとぶちまけた。
めちゃめちゃ気持ちが良かったのになぜか下半身が不快感に包まれる。冴えてきた頭には毎朝の聞きなれたアラームの音が聞こえてきた。


「…嘘だろ」

気付けば視界にはいつも通りの寮室で、下半身の不快感は夢精したことによるものだった。室内にはサクラくんがいるのに、と思ったがロケの出張のため今この部屋には自分一人だということを思い出してホッとする。しかしパジャマと体を綺麗にしなくてはならなくて、急いでシャワーと洗濯を済ませてESビルへと向かった。




「おはようございます…」
「おはようジュンくん!朝から辛気臭い顔だね?悪い日和!」
「すんませんねぇ、昨夜寝付けなかったんすよ」
「そうなの?ジュンくんにしては珍しいね?」
「ほんとっすよ…」

昨日、雑誌のインタビュー記事のために優さんとこれでもかというほど会話をした。きっと優さんは俺個人への興味なんかほとんどなくて、仕事上俺と過ごしてたくさん会話をしてくれただけなんだろうけど、それでも俺の気分は上々だった。
スーツ姿の優さんは、高校の制服の時には解らなかった体のラインがわかりやすくて、意外とスタイルいいんだなとか、胸大きいんだなとか、うなじが綺麗だとか、そんなとこばかりに目がいってしまった。
取材中前のめりになる優さんの胸が机に乗るのを見て興奮したし、昨夜はそれをオカズにして、悶々として寝るのが遅くなってしまった。

「ただでさえ目付きが良くないんだから、しゃきっとして欲しいね!」
「えぇ、気をつけますよぉ。撮影前に顔洗ってきますね」
「うんうん、僕と並ぶんだからジュンくんにも綺麗でいてもらわないとね?」

メイクをされる前に冷水で顔を洗って目を覚まそう。女の夢のせいで仕事に支障が出るなんて、恥ずかしくて表を歩けなくなりそうだ。
今朝の夢を初めから思い出しながら歩いていたら、廊下の曲がり角で突然視界に何かが現れたから、体にぶつかってこないように手でガードしたら、ちょうどその手のひらに柔らかいものが押し付けられた。

「へぁっ!?」

曲がり角でぶつかってきたのは今朝夢で見たばかりの優さんで、俺の手に収まっているのは夢にまで見た優さんの胸だった。ラッキースケベついでに一揉みすれば、「んっ」と可愛い声が漏れた優さんは顔を赤らめた。

「すっ、すんません!まさかぶつかってくるとは思わなくて」

俺が手を下げるのと同時に優さんも少し後ずさった。勢いで揉んでしまったけど、嫌われたかもしれないとドキドキする。

「私こそごめん、変なの触らせちゃって…急いでて前見えてなかった、ごめんね?大丈夫?」
「俺は大丈夫ッスよ。俺の方こそなんか、すんませんした」
「いいのいいの!えっと…急ぐから、行くね!またね」

胸を触られたせいか頬が赤らんでいて色っぽい。俺に小さく手を振りながら微笑んでくれたのは良いのだが、またしても前ではなく俺を見ていたせいでつまずいて転けそうになった。それはまずいと思い、すぐさま優さんを抱き止めた。
床に崩れないようにきつめに抱き締めたものの、女体の柔らかさにどぎまぎする。ブラウス越しでもわかってしまう、俺が触れているのは下着の線だった。

「ご、ごめん…ありがとう…」
「いえ…危なっかしいんで落ち着いて歩いてくださいねぇ?その辺でこけて怪我でもするんじゃないかとヒヤヒヤしますよ」

鼻腔をくすぐる甘い香りに惚れ惚れする。名残惜しいけど廊下でいつまでも抱き締めているわけにはいかなくて優さんを解放する。

「あっ」

なぜか優さんは石にでもされたのかという具合でぴしりと固まってしまう。少し顔を覗けば真っ赤だし、俺が何かやらかしたのか。

「だ、大丈夫ッスか?どこか痛めたとか…?俺また変なとこ触っちまいました?」
「い、いや、大丈夫…大丈夫だから、お気になさらず」
「全然大丈夫そうに見えないんスけど…足くじいたなら医務室まで連れて行きますよ」

心配したのだが優さんはぶんぶんと首を振った。

「あの…ほ、ホックが、外れたみたいなので…ほんと、それだけだから、大丈夫だから、また後でね!」

ホックって何だ、ブラのことか?
優さんは少し後退りすると、俺に背を向けてトイレの方へと駆けて行った。その背中にうっすら浮かび上がる下着はなんだか横一直線ではなく斜めになっていた。

「…あ、やば」

想い人のブラのホックを外してしまうだなんて、とんだラッキースケベが連続するものだ。これから仕事だと言うのに勃ってしまいそうで、俺もトイレの個室へと駆け込んだ。