勘違い


万事屋で働いていても、仕事が無いおかげで昼まで起きることができない。
今日も寝すぎたおかげて腹が減った。そろそろ新八あたりが昼飯でも用意していてくれるんじゃないかと思って寝室を出た。

「おはよ〜…くそねみ…」
「おせーよ」
「おはよう」

居間には珍しくお客さんがいた。寝ぼけているから見間違いかとも思ったが、私がこの人の声を聞き間違える訳がない。

「桂さん…!」

寝起きの姿を見られてしまうなんて、私としたことが!
急いで顔を洗って歯を磨いて着替えて髪をとかし、もう一度居間に向かった。

「おはよう桂さん!今日は何の用でした?」

爽やかな笑顔でもう一度挨拶をした。そしてさりげなく桂さんの隣に座る。銀さんが不満そうに見てくるのは無視をする。

「…桂さん?」

桂さんは私を見つめたまま黙っていた。そんなに見つめられたら照れちゃうし、どこかおかしいのかとドキドキする。

「いや、いつもは化粧をした顔しか見たことが無かったからな。珍しくてつい」

そうだ、化粧をし忘れていた!今さら知っても見られてしまってからではもう遅い。

「お見苦しい姿を見せてしまいすみません!」

これからは早起きしていつでも桂さんに会える準備をするようにしよう。
少しでも顔を見られたくなくてうつむいたら、桂さんに頬を触られた。

「優殿は素顔でも可愛いぞ」
「…へ?」

素顔でも、可愛い。素顔じゃなくても、いつもの化粧してる顔でも?普段から可愛いとか思ってくれてたり?ていうか、素顔褒められた。お世辞だか何だか知らないけど褒められた!

「なぁ銀時、お前もそう思わんか?」
「うちの優ちゃんはいつでも可愛いに決まってんだろなめてんのか」
「桂さん私嬉しいです!」
「俺のコメント無視か!?」

銀さんなんてどうでもいいの。大好きな桂さんに褒められたことに意味があるの!

「とっても嬉しいので抱きついてもいいでしょうか!」
「そ、そんな破廉恥なことを恋人でもないのにしていい訳がないだろう!」
「ですよねすみません!」

ああしくじった!言う前に行動すればよかった!あ、そうか、やっちゃえばいいのか。

「既成事実!!」

私は思いきって桂さんに抱き付いた。良い匂いにドキドキするし癒されるし最高!
だが桂さんは固まっていた。あまりに動かないから怖くなって桂さんの顔を見られない。代わりに銀さんを見てみると、銀さんも固まったままで桂さんのことを見ていた。
不思議に思い、腕の力を緩めて桂さんを見上げてみた。

「…桂、さん?」

驚くことに、桂さんは顔を赤らめて変な汗をかいていた。桂さんは照れるとこんな反応を見せてくれるのか。

「破廉恥なことをしてしまったので恋人になりましょう!」
「な、何を言っている!好きでもない者同士で恋人になれるわけなかろう!」
「ふぁっ!?か、桂さん、私のこと嫌いですか…」

とてつもないショックを受けた。せっかく抱きついて既成事実を作ったのに。

「き、嫌いではない」
「…え?」

桂さんはさらに顔を赤らめる。そんな反応を見せられたら、勘違いしちゃうじゃないか。

「なら良かった!私は桂さん好きです!それで桂さんも私のこと嫌いじゃないならやっぱり恋人になりましょう!」
「し、しかし、」
「おい優…正気か?ヅラだぞ?ここにかっこいーい銀さんがいるのにヅラがいいの?」
「しまった人前で告白しちゃった恥ずかしい!」
「俺のこと見えてなかったの!?」

告白してしまった今、銀さんなんかどうでもいい。それより桂さんのことが気になって死にそう。

「私はずっとずっと桂さんが好きなんです!」
「だが、お前は人妻…基、銀時の彼女なのだろう!?友の目の前で彼女を奪うなど、武士のやることでは…」
「何の話!?私は彼氏なんかいないしずっと前から桂さんにしか興味ありませんが!?」
「いや、しかし銀時が…」

銀さんが変なことを桂さんに吹き込んだのか。銀さんを見ると、知らんぷりしてジャンプに目を向けていた。

「そんなのは銀さんの嘘なの!だから、その、私じゃだめですか」
「…そう、だな。NTR展開を期待したりしなかったりと悶々としていたが、やはり実際にNTRは無い方が良いな」
「何言ってるの?」
「こっちの話だ。だが優殿がフリーということは、本当に手を出しても良いのだな…?」

桂さんは銀さんの方を見る。銀さんは歯をくいしばっていた。

「優殿、俺と一緒に日本の夜明けを見ようではないか」
「は?あ、はい!喜んで!」

銀さんの思わぬ邪魔が入っていたことは腹立たしいが、結果的に良い関係になれたので許してやろう。

「桂さん、お昼一緒に食べに行きましょう!」
「ああいいぞ、銀時も来るか?」
「うっせー!!二人で行ってこいちくしょう!俺は寝る!!!」

銀さんは寝室に入っていってしまった。拗ねてるだけだから、気にしないでおこう。

「どこ行きましょう?」
「俺の行き付けの店がある。そこへ行こう」

桂さんは微笑み立ち上がり、続いて立った私の手を握った。大きくて頼もしい桂さんの手。

「あの、その前に、桂さんの気持ち聞かせてもらってもいいですか」

スルーできると思っていたのか、桂さんの表情が固くなる。

「私は桂さん好きですよ」

銀さんの前でも散々言った後だ、今の私なら恥ずかし気もなく言えてしまう。
桂さんはしばらく黙っていたが、目をそらして呟いた。

「俺もだ」

いちいち顔を赤らめる桂さんが愛しくて堪らなかった。