それは違うぞ!

「ねぇ日向くん、午後って暇かな?」
「え?まぁ…暇だけど」
「じゃあ、デートしようよ」

私はにっこり笑っておでかけチケットを提示した。
しかし日向くんはひきつった笑顔だった。
やっぱり日向くんは私とデートしたくないらしい。
ふざけないでよね。
私がこんなにも日向くんが好きで日向くんだけに使おうとして大量のおでかけチケットを抱えているというのに。

そして午後になり、待ち合わせしていた四つ目の島の橋の前に移動した。
すると日向くんはすでにそこで待っていた。

「ごめん、待った?」
「いや、俺も今来たばかりだよ」
「なら良かった」

以前はあんなにも親しげに話してくれたのに、なぜこんなにもぎこちなくなってしまったんだろう。
日向くんは相変わらず私と目を合わせないようにしてくる。
これは考えても無駄だ。


「ねぇ日向くん」
「ん?」
「日向くんは私に興味がなくなったの?」
「え、ええっ!?何…、は!?」

以前の日向くんは私のことばっかり見ていて構ってきて、確実に私のことを好いていた。
それがバレていないとでも思っていたのか、日向くんは目を丸くして驚いた。

「私のこと、好きじゃなくなっちゃった?」
「それは違うぞ!」
「へへっ、じゃあやっぱり私のこと好きなんだ」

嬉しくなって笑うと、日向くんは顔を赤くした。

「全部解ってたのかよ…」
「そりゃね。私も日向くん好きだから。日向くんのことずっと見てたら、そうじゃないかなーって思っちゃって」
「…恥ずかし。っていうか、今好きって、」

照れる日向くんはこの上なく可愛かった。
だからって私を避けていたことを許すつもりはない。

「でも、好きならなんで最近私のこと避けてたの?日向くんってば七海ちゃんとか唯吹ちゃんとかのパンツばっかり集めちゃってさぁ」
「そ、それは…」
「日向くんがそんなにパンツ好きなら私のだってコレクションにくわえさせてあげるのにぃ…」

いつも膝まで隠れているスカートの裾を少しずつ上げていくと、日向くんは目のやり場に困ったのか一人で歩き出してしまった。

「待ってよ日向くん!」

やり過ぎたかな、と反省しながら追いかけて日向くんの腕を掴んだ。

「日向くんに避けられてすっごく寂しかったんだよ?」
「それは…ごめん」
「なんで避けてたのか教えてよ」
「…横島のことが、好きだから。あれ以上仲良くなって、うっかりパンツなんかもらっちまったら、その…なんつーか、耐えられない…と思って」
「…え?オカズにしちゃいそうとかそういうこと?」
「それは違っ……違わない」

肯定されてしまった。
まぁ日向くんも健全な男子高校生だし。

「だからって避けられるくらいならオカズにされた方がいいよ!私、日向くんのこと大好きなんだからそのくらい構わないよ」
「ただの友達がパンツもらうってだけでもおかしいのに、そんなことに利用してたら気持ち悪いだろ!?」
「だったら日向くん、私と付き合ってよ。そしたらパンツがどうとか言ってないで私そのものが手に入るんだけど、どうかな」

日向くんの前に回り込んで真っ直ぐ目を見つめてみる。

「俺なんかで、良いのか?」
「当たり前でしょ!私は最初から日向くんが好きで好きで他の人のパンツなんか一枚も貰ってないんだから!」
「…俺、横島以外のは全部貰ったんだけど」
「…」
「…ごめん」

まさか日向くんがこんなにもパンツマスターだとは思わなかった。

「…私のパンツも貰ってくれるなら許す」
「はぁ!?で、でも」
「あとは捨てても履いても飾っても、何に使ったって構わないから」

日向くんの顔がどんどん赤くなる。
今までは友達としての顔しか見れなかったのに、こんな顔も見れるなんて。
興奮しちゃう。

「だからね、大好きな日向くん。私の彼氏になってよ」
「…あぁ。俺で良ければ」

日向くんは照れ臭そうに微笑んだ。
このそそる笑顔が私のものになるなんて。



「勿論、デート終わったら日向くんのパンツは私が美味しく頂くからね?」
「美味しく、って表現はやめてくれ…」