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女子数人集まるなかでの女子トークの最中、三奈ちゃんが突然私に話を振ってきた。他の子も「そーなの!?」とか驚いて私を見てきた。
「な、なんで、そう思ったの」
苦し紛れに聞いてみるが、顔が熱い。もう全てバレているとしか思えない。
「前からさ、授業中、黒板じゃない方に顔傾けてるなぁって思ってて。演習とかのときも気にするようにしてたら、なーんか爆豪ばっか見てる気がして」
「あ!わかる!真顔で見てるよね!」
「やっぱり!?」
三奈ちゃんだけでなくお茶子ちゃんにまでバレていたようだ。
「…爆豪ちゃんのどこがいいのかしら?」
つゆちゃんは首を傾げる。響香ちゃんもうなづいているし、皆もしかして爆豪くんの良さが解らない?爆豪くんに目を奪われてたの私だけ?
「顔、めっちゃよくない?」
「いや、人殺しそうな顔してるけど」
「目付きじゃなくて!その、顔立ち?パーツ整ってるし、肌めっちゃ綺麗だし、えっと…」
「……要するに顔がとにかく好きってことね?」
「う、うん」
顔だけじゃないけど、顔はとにかく好きで。轟くんみたいに正統派じゃないのは重々承知だけれども、好みかどうかで言えば、断トツで爆豪くんが一番だ。
「性格はアレじゃん?」
「そりゃ口悪いけど、勉強できるし、意外と真面目だし、作戦とか立てると意外と冷静だし、口悪いけど、怒らせなければ罵倒してこないし、普通に会話できるし、」
「いや、人間なんだから普通に会話できるのは大前提じゃない…?」
「重要なのはそこじゃなくて!女子とわざわざ喋ったりしない人だけど、話しかければ普通に喋ってくれて、怖くないのが、なんか嬉しくて、ついでにあの真っ赤な瞳と目が合えば更に嬉しくて、あと……普通にかっこいいし、ってまた顔の話になっちゃった。えっと…ほら、あの厚めの唇とか柔らかそうで……あっ」
つい語ってしまったせいで、みんなもちょっと照れながら私の話を聞いていた。
「あの爆豪のことをねぇ」
「しょーがないじゃん好きなんだもん」
素直に認めたのは良いものの、なんだか背後で扉が開かれた音がした気がする。今私の目の前に女子は全員居るわけだけど、扉を開けたのは必然的に男子ということになるのでは。
「爆豪今の話聞いてた?」
三奈ちゃんが気まずそうに問い掛けた。あぁ最悪、本人登場で聞かれてしまったのか。
「聞いてねぇよ」
あの爆豪くんが気を使ったことにめちゃくちゃ驚いて振り返ってみれば、なぜか爆豪くんの眉間に皺が寄りまくっていた。手に汗が滲んできてどうしようかと迷って沈黙が続いているうちに、爆豪くんは水だけ飲んで共同スペースを出ていった。
「優、追いかけなよ」
響香ちゃんに言われるがまま、爆豪くんを追いかけた。
「待って!」
「……」
「ば、爆豪くん!」
顔の熱も引く前に話しかけるのは気が引けたが、今しか無いと思った。
「んだよ、追ってくんじゃねぇ。黙っててやっからついてくんな」
「や、やっぱり話聞こえてたんじゃん!」
「聞こえてねぇことにしてやるってのがわかんねぇのか?この俺が気使ってやってんだから察しろや!」
おかしい、爆豪くんが私に気を使うなんてそんなこと、あるわけがない。失礼だけど。
「つーかてめぇの好きな奴とかどうでもいいわ、知りたくもねぇ」
「へ」
「興味ねぇ」
待って、それってさっきの会話、もしかして私が誰を好きなのかまでは聞き取れなかった感じ?好きな人が居るってとこまでしか解らなかったってこと?
「あの、爆豪くん、」
「あぁ!?まだ何かあんのか?口封じなんかしなくても、んなどうでもいいことばらしたりしねぇわ!」
「ちが、そうじゃなくて、私の、その、」
「うぜぇ!はっきり喋れや!」
「爆豪くんが好き!」
「は?」
久々に怒られたのが恐くて、泣きそうになりながらも告白した。そしたら爆豪くんは怪訝そうに、綺麗な瞳で私を見つめた。
「だ、だから、どうでもいいとか…興味無いとか…言わないで」
爆豪くんにお願いをするなんておこがましい。でも、このまま何も言わずにいたら、一人で泣いてしまいそうだった。
「…だから、何だよ」
「……え」
「好きだから、何なんだよ。俺にどーして欲しいんだ?あ?」
たぶん、普通の男の子にその反応されたら泣き寝入りしたと思う。でも爆豪くんは、顔を真っ赤にしながらそんなことを言うものだから、嬉しくなった。
「つ……付き合って、欲しい、です」
「最初からそう言えや、他の奴に相談なんかしてんじゃねぇ」
「ご、ごめん……。…それで、その、返事は」
「……横島の頼みくらい聞けるに決まってんだろ、なめんな」
照れ隠しなのか、わしゃわしゃと乱暴に頭を撫でられた。演習以外で爆豪くんから触れてきたのは初めてで、鼓動が一気に激しくなった。
「相談も頼みも全部俺が聞いてやるから、これからは他の奴と喋ってねぇで直接俺んとこ来い」
「……優しい」
「元から優しいだろうが」
「…そうだね」
元から、私には優しかったよ。爆豪くんのことが好きだからそう自惚れてしまうだけなのかと思っていたが、ほんとは、ほんとに、私には特別優しくしてくれていたのかもしれない。
「爆豪くんのそういうとこ、好き」
顔だけじゃなくて、不器用だけど優しいところも、全部引っくるめて、大好き。
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