純情可憐

俺は今、理解できない状況におかれている。
最近毎日特定の女の子が部屋に遊びに来たり俺のことを見つめたり、はにかんでくる。
日向に相談したら自分で考えろと切り捨てられたので、頭の良さそうな七海に相談しに行った。すると、それはフラグだよ回収しなきゃ、とさらに訳のわからないことを言われた。

「左右田くん…どうしたの?」

いつもいつも俺の部屋に遊びに来る横島優。正直言って、辛抱たまらん。
俺がこんなに下心で満ち満ちているというのに、横島は無垢な瞳で俺を見る。どうにかしてしまいたくなるが、俺はヘタレだからそんなことはできそうにない。

「…いや、ちょっと考え事を」

しかも今日に限っては、もう夜時間だ。雨が降って雷が煩くて怖いから眠れないの、ということらしい。しかし校則で、自分の部屋以外で寝泊まりすることは禁止されているから横島は寝ることができない。俺も付き合って起きているしかないのだ。

「左右田くんがぼーっとしてたら私、部屋で一人でいるのと変わらないよぉ」

電気は点いておらず暗闇なので顔はよく見えないが、横島の声が泣きそうなくらい震えていた。というか、見えないのはコンタクトを外しているせいってのもある。

「悪い悪い」
「うー…」

俺たちはベッドに隣り合って座っているのだが、女の子特有の甘い香りが漂ってくる。そして怖がった横島が更に寄り添ってくるから、足と肩が密着する。

「…ち、近くね?」
「…いやなの?」
「い、いやじゃねぇけどよ」

ドキドキするんだよ。

「…ごめんね、寝なきゃいけないのに、起こしちゃって」
「気にしてねぇよ、そんなに眠くねぇし」

横島がいたらドキドキして寝れるわけねぇし。つーか、こんなに怖がってるなら肩でも抱いた方が好感度上がるのか?
そう思って手を上げたのだが、横島が肩にもたれかかってきているせいでそれ以上は動かせなかった。仕方ないと思い手を下ろしたのだが、手のひらの半分ほど横島の太ももの上に置いてしまった。
ちゃんと見えてないせいもあるが、こんなことになるとは思わなかった。横島はショーパンだったから、太ももに直に手を置いたことになる。すべすべだった。

「そ…左右田くん?」
「いや、その、えっと…」

もう自棄だ。そのまま太ももを撫でて揉んでやった。暖かく柔らかく滑らかだった。特に内腿、ふにふにだった。

「んっ…く、くすぐったいよぉ」

横島が身動ぎしたせいで両太ももに手を挟まれた。なんだこの最高な感触は。
更に太ももを楽しむと横島は甘い声を漏らす。いけないことをしている気分になってしまう。

「もー、怒ったからねっ」

横島はそう言うと、俺の脇腹をくすぐってきた。しかし脇腹は別に弱くないのでなんともなかった。
代わりに横島の脇腹に触れると、驚いたのか高い声を出した。

「わ、脇は弱いんだからやめてよぉ…」
「ほー、そうか、弱いのか」
「えっ、」

なんだか楽しくなってきて、横島の脇腹をくすぐってやった。身動ぎしながら漏れそうになる声を必死に抑える横島の姿は何とも言えない色気があった。

「ふっ…、く、ぁっ…」

座っているのが辛くなったのか、横島はベッドに倒れこんだ。ついでに太ももを撫でながら、服の中に手を入れ直接脇腹を触ってみた。肌はすべすべで素晴らしいくびれだった。

「だ、だめぇ…左右田、くんっ…」

素直で純粋な横島の口からこんなに色気のある声が出るなんて誰が予想できただろうか。まぁ俺が不純なことをしているせいなのだけど。

「いいだろ、ちょっとくらい」
「全然、ちょっとじゃな…あっ、んぅ…」

まぁ太ももついでだし、というわけでショーパンの裾から手を入れる。当然パンツを履いているから、その上から尻を触ってみた。しかし横島が異常に静かになったからすぐにやめたけど、良い触り心地だった。何をしてるんだ俺は。
今度は素肌の背中を撫でると、これまた色っぽい声を出した。そこで疑問に思ったのだが、横島は下着を着けていなかった。背中が上から下までするんと撫でられた。

「そ、左右田くんの、えっち…」
「大丈夫大丈夫、くすぐってるだけだから」
「ふぇぇ…ぞくぞくするよぉ」

ぞくぞくって何だ。まさか、感じてんのか?いやいや、純粋な横島がまさかそんなえっちぃわけが…

「…なんで下着つけてないんだ?」
「よ、夜はつけないんだもん…」
「男の部屋にいくのに?」
「忘れてたんだもん…」

横島は胸を覆い隠すように両手で自分の肩を抱く。しかし余計に、谷間は強調されることになった。
横島の頬に手を触れると、驚くほどに熱かった。くすぐられて疲れたのか、息が荒い。

「あのね、左右田くん…」
「…おう」
「今日はありがとう、私が怖がってるからこうやって気持ちを楽にしてくれたんだよね」

横島は嬉しそうな声で俺の手を握る。決して俺にそんなつもりがあった訳ではない。ただ下心でくすぐってただけだというのに。

「左右田くんのおかげでもう怖くなくなったよ。だから、そろそろお部屋戻らなきゃ」
「…もう行っちまうのか」

きっと横島のことだから明日も来てくれるだろうが、少し物足りない。普段に比べれば十分楽しんだけど。

「今度は左右田くんが寂しくなっちゃった?」
「…かもな」
「えへへ、じゃあもうちょっとだけ、居てあげようかな」

横島は起き上がって俺の体に手を回し抱き付いてきた。下着つけてないって忠告してやったのに、誘ってんのか?
まぁ横島に限ってそんなことはないだろう。この純真無垢な瞳でやらしいことを考えている訳がない。
せっかくだからと横島を抱き締めると、嬉しそうに可愛らしく笑った。

「へへっ…左右田くーん…」

七海が言っていたフラグってのが何なのか、結局解らず終いだった。
けどこれで横島が喜んでいるんだから良しとしよう。