誕生日

「そーだー、はよーっ」
「おはよー」

さて問題、今日は何の日でしょう!俺の誕生日です!

「何こっち見てんの、腹でも減ったの?」
「ちげぇよ!朝飯ならちゃんと食ったよ!」
「じゃあこっち見んな」

酷い言い方しやがって。この分だと俺の誕生日なんて知らないんだな、くそ…

「なー、そーだー。田中とソニアってすっごい仲良いけど、できてんのかなー」
「んな訳ねぇだろ!ふざけんな!」
「真面目だよ。田中かっこいいなー、でもソニアが相手じゃしょうがないよねー」
「…え?」
「ん?」

しょうがないよねーって何だ?何だその諦めの言葉は。もしかして田中のこと狙ってたのかこいつ。ふざけんな田中、ハーレムかよ。

「左右田もそう思わない?見た目はっちゃけてる左右田より、中二こじらせてるけどかっこいい田中の方がソニアとお似合いだって」
「うう、うっせ!うっせ…」

んなこと言われなくても解ってんだよ。わざわざ俺の誕生日に鬱になる話なんかしなくてもいいだろ。

「なー、そーだー」
「…んだよ」
「私な、じっくり考えたんだけどな、付き合うならやっぱり田中みたいなかっこいい奴じゃなくて、性格が合う奴が良いと思ったんだよ」
「んで田中を諦めたのか」
「諦めるも何も、うーん、近寄りがたいからなぁ」

くそっ、田中め。ソニアさんにきゃぴきゃぴされて横島の眼中にまで入りやがって。

「面倒だから結論から言うとな、左右田、付き合って」
「…は!?」
「せっかくの誕生日だから本当は左右田が喜ぶような物あげようと思ったんだけどねー、何が欲しいか解んなくてさ。女の子に告白されるってイベントは喜んでくれるんじゃないかと思ってさ。私からってとこに意味が有るかどうかだけど。…感想は?」
「感想って…ちょっと待て、あの、本気か?」

こんな雑談みたいに普通にこの話題って。しかもさっきまで田中かっこいいとか言ってたくせに。

「本気だと思えないなら流してくれていいけどなー。喜んでくれたらラッキー!くらいの気持ちで告白してみただけだから」
「いや、確かに嬉しいけど…」
「…本当?」

横島は嬉しそうに笑いやがった。いきなり女みてぇな顔されると困る。ついソニアさんと比べてしまうのは俺の悪いところだ。

「今なら突然のデレと私の彼氏になれる権利を抱き合わせでプレゼントしちゃうけど、受け取ってくれる?」
「…お、俺が受け取っちまってもいいのかよ?」
「言ったじゃん、これがじっくり考えて出した結論なんだって。むしろ左右田の彼女にぴったりなのは高嶺の花であるソニアではなく程よく残念な私だと思うんだよ」

そりゃあな、俺がソニアさんの横に並べるほどできた人間じゃないのは解ってる。ソニアさんと比べてしまえば横島が残念な女子だってのも解る。

「へいお兄さん、私で妥協しない?」
「妥協っつーか…万々歳だっての」

でも悲しいけど好いてくれないソニアさんより、好いてくれる横島の方が良いに違いない。ぐしゃぐしゃと横島の頭を撫でると、横島は女の子らしい照れた表情を見せた。

「で、彼氏になる権利ってのは受け取ったけど、突然のデレとやらはどうしたんだよ」
「…突然デレたら気持ち悪くない?」
「別に」
「ならいいや」

横島は微笑んで俺の胸に飛び込んできた。調子に乗ってみたものの、いきなりの出来事に対応できる訳もなく動けなくなった。

「左右田、すぐに私のこと好きだって言わせてみせるから覚悟しててね」
「おおう…」
「ここで抱きしめてくれないあたり、ほんと左右田は残念だな」
「う、うっせ!残念で悪かったな!」