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にやにやして封筒を眺めながら教室に入ると、まだ轟くんしか登校していなかった。黒板の日直当番のところに轟と書かれているし、日直だから早めに登校していたのだろう。
「おはよー!轟くん!」
「おはよう。朝から元気だな」
「へへへー、わかる?ふふふ」
「何か良いことでもあったのか?」
「実はねー、」
うっかり喋りそうになってしまったが、男子に自慢する話では無い。もらったラブレターを見せびらかす女子など居ていいはずがない。何気なく封筒を後ろ手に隠したら、轟くんはこちらに近付いてきた。
「何隠したんだ?」
「えっ、や、何も」
「気になるだろ」
いやいやそんなに近付かれたら困るんですが。
目の前までやって来た轟くんは、真っ直ぐ私を見つめてくる。なんでそんな目で見てくるの。イケメンと見つめ合うのは心臓に悪く、ラブレターの内容以上に私の鼓動を激しくさせた。
すっと伸びてきた轟くんの手は私の腕を掴み、ラブレターを持っている私の左手を目前まで引っ張ってきた。
「……横島さんへ」
「わー!!これは!!違うの!あの!えっと、」
何を言い訳しているんだ。別に、渡すラブレターではなく貰ったラブレターなのだから、知られても問題なんて無いはずなのに。
「……朝、知らない男子が横島の下駄箱にこれ入れてるとこ見かけた」
「そそそそうなんだ」
「…そんなに、嬉しいものか?告白されるの」
「そ、そりゃあ……私も女の子なので……」
「ふーん……」
轟くんは真顔で、何を考えているか解らない。ただ私の腕を掴んだまま見つめてきて、ドキドキして、顔が熱い。
「先に謝る。ごめん」
「へ?」
轟くんは私の手からラブレターをスッと抜き取り、火を点けて灰にしてしまった。突然のことに唖然としていたら「横島」と名前を呼ばれて再び轟くんに視線を戻した。
「俺も横島が好きだ。知らない男子を選ぶくらいなら、俺にしないか」
ただのクラスメイトだと思っていた男の子から突然愛の告白を受け、時が止まったように感じた。だってまさか、あの轟くんが、私なんかのことを好きだなんて。好きだからって、ラブレターを燃やしてしまうなんて。轟くんも意外と爆豪くんみたいに強引なところあるんだ。
「返事、待ってるから」
轟くんはそれだけ告げると自分の席へと戻っていった。どうすべきかと立ち尽くしていたら、他のクラスメイトたちも登校してきて轟くんに何も言えなくなってしまった。
ラブレターをくれた人には申し訳無いけど、私はどうやら直接愛の言葉を貰った方が嬉しいらしい。どうするか考える時間も惜しいくらいに、轟くんの想いを受け入れたくてしかたがなかった。
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