コンとぶつかる


今日は休日だけど、課題を教えてもらうなんて口実で一護の家に向かっていた。普段よりちょっと可愛い格好をしたし、可愛いとか思ってくれないかな。
うきうきしながら歩いていたら、横路から飛び出してきた男にぶつかられた。慣れないヒールでバランスを崩し、倒れた。
コンクリートに倒れたら絶対痛いと思って覚悟したのに、思ったほどの衝撃がなかった。

「大丈夫か!?」

ぶつかってきた人が私を抱き止めて下敷きにまでなってくれたらしい。このままでは申し訳なくて体を起こして見てみれば、私の大好きな一護が横たわっていた。

「わわっ、ごめん!痛くなかった!?」
「優さーん!」

一護はがばっと起き上がって私をまた抱き締めてきた。違う、一護は私にこんなことしたりしない。優さん、なんて呼び方してこない。

「コンでしょ!!離して!!」

ぐぐぐ、と一護の体を押すのだが、男の腕力には勝てやしない。道端でどうして抱き合わなきゃならないんだ恥ずかしい。

「曲がり角で出会うなんて運命じゃないすかね!?優さんこそ運命の女神!」
「一護の体で変なことしないで!一護の顔でそういうこと言わないで!」
「いーじゃないすか!一護のこと嫌いか?」
「一護は好きだけどコンだから嫌なの!」
「えっ」

あ、しまった。好きとか言っちゃった。

「でも体は正真正銘の一護なんだし、今のうちにいちゃいちゃしたってばれねぇっすよ」

コンは一護の顔ででれでれと笑う。違うんだ、私が好きなのは爽やかに微笑む一護の顔だ。

「眉間にシワがあれば一護らしいだろ?」

キリッとして一護らしい顔を見せてくる。その顔をするなら本当に離してくれないか。コンなんかにドキドキしたくないんだってば。

「な、優。このまま俺んち来ねぇ?」
「行く……ていうか、元々一護の家行く約束だったし!何勝手に出歩いてるの!?」
「友達来るから家でおとなしくしてろとか言われてよぉ、男なんか待ちたくねぇと思って家出てきたらこうして優さんに出会えたんすよ!」

そしてまたきつく抱き締められる。私がこんなに隙だらけで好き勝手されてしまっているのも、一護のせいだ。中身が一護だったらどんなによかったことか。

「じゃあ一瞬で一護の家に帰って、一護が帰る前に事を済ませとくか」
「事って何!?私に何するつもり!?」
「何して欲しい?」

なんて言われて頬にキスされた。一護の体で、一護の、唇で。

「一護に言い付けてやる!」
「言えるんすか?一護の唇でキスされて満更でもなかった、なんて」
「っ、ばか!」
「さー、帰りましょ〜」

解放されたと思ったら、すぐにお姫様だっこなんてされてしまった。コンの脚力が異常なせいで、走る速さと高さが怖くてコンにしがみついてしまった。
これ以上コンにもてあそばれたくないなら、早く一護戻ってきてください。