藍染隊長とぶつかる


虚退治を急いで終わらせて、急いで瀞霊廷に帰った。なぜ私がそんなに急いでいるかと言えば、早く藍染隊長に会いたいからだ。会って、早かったね、よくやったね、と褒めていただきたいからだ。不純な動機で仕事をしているように思えるかもしれないが、それのおかげで仕事の効率が良いのだから誰も文句は言えないだろう。
会う前にお風呂に入って身を清めたいとも思ったけど、そんな暇があるなら今すぐ藍染隊長に会いたい。
隊首室に向かってひたすら走って、廊下を曲がるときに人が見えたので止まろうと思った。けど足袋では床で急に止まることができず、そのままの勢いで人にぶつかった。

「廊下は走っちゃいけないよ」

ぽん、と頭に手を乗せられた。この声は、この匂いは、この手の温もりは、藍染隊長だ。

「ただいま帰りました!」
「おかえり。僕の話聞いてるかい?」
「聞いてます!藍染隊長に会えたのでもう走らないです!」

あぁ嬉しい。あんなに会いたかった藍染隊長と曲がり角でぶつかれるなんて。運命の出会いみたい。

「何か急ぎの用だった?」
「はい!急いで藍染隊長に会いたくて早く速く帰ってきました!」
「そうかい」

なでなでと頭を撫でられる。子供扱いでも、それでもいい。優しくしてもらえるだけで私は飛びはねるくらいに嬉しいんだから。

「でもそんなに急がなくても、僕は逃げたりしないよ」
「逃げようが逃げまいが、藍染隊長がどこに居たって私は急いで藍染隊長の元に駆けつけますよ。逃がしませんよ」
「じゃあもし、君の手の届かないところへ行ってしまったらどうする?」
「そんなとこ行くなら、私も行きます!藍染隊長居なかったら、つまんないですし」

楽しくないからここに帰ってくる意味がないし、ここに居る意味もない。私ってばどんだけ藍染隊長のこと好きなんだ。重すぎ。

「死神のみんなとは会えなくなったとしても?」
「…藍染隊長死ぬんですか?質問が不謹慎です」
「ごめんね」
「死ぬにしてもどこかに行くにしても、私のこと道連れにしてくれるなら許してあげます」
「どうして、そこまで…」
「藍染隊長が、寂しくないようにです!」

藍染隊長が死んだら、私の手の届かないところへ行ってしまったら、なんて考えただけで悲しくなって涙が出てきた。ここまで精神が脆くてよく死神なんてやってられたな。

「ありがとう」

藍染隊長は呟いて、泣いた私を抱き締めてくれた。この大好きな藍染隊長がいなくなるなんて、嫌だ。藍染隊長の居ない私の世界なんて、真っ暗闇と同じだ。

「地獄の果てまで、道連れにしてもいいかい?」
「藍染隊長が一緒なら、地獄だって楽園です、道連れにしてくれないと嫌です、ずっと、一緒にいたいです…」

死ぬ瞬間まで藍染隊長に側に居て欲しい。そう考えるのは、さすがに私のワガママだろうか。