浮竹隊長とぶつかる


今日は久々に現世へ行くことができたので、自分へのお土産と、隊のみんなへのお土産もちょこっと買ってきた。大好きな浮竹隊長には、特別にお花を買ってきた。綺麗な花が飾ってあれば浮竹隊長も元気が出るかなーと思って。
とりあえずみんなのために買ったお菓子を置いてこようと思って、給湯室へと向かった。廊下の曲がり角に差し掛かった時、人とぶつかりそうになった。危ないと思って立ち止まったのに、その人はふらついていたのかそのまま私にぶつかって倒れそうになった。

「ちょ、ちょっと!」
「あぁ…すまない、よろけてしまって」

大好きな浮竹隊長は、私が任務に行っている間にとても弱っていた。顔色も悪いし、ふらふらしているし、見ていてつらい。

「どうして体調悪いのに出歩いてるんですか!倒れたら困るじゃないですか!私が!」
「はは…すまないね」
「雨乾堂に戻りましょう。私、支えますから」

荷物が少し邪魔だったけど、浮竹隊長に肩を貸した。寄り添えるのは嬉しいけど、このシチュエーションじゃ楽しくない。

「不調なのにどうして外へ?」
「薬を切らしてしまっていることに、さっき気が付いてね。卯ノ花隊長のところへ向かっていたんだが……途中で清音に会ったから、代わりに取りに行ってもらって、俺はもう雨乾堂に戻るところだったよ」
「薬、今すぐ必要だったんですか?私が帰るの待ってくれたら、私が行ったのに……ていうか、連絡くだされば飛んで帰ってきたのに」
「優に、余計な心配かけると思って」

そんなの気にしなくていいのに。無理して倒れた時の方が心配で死にそうになるんだから、もっともっと頼って欲しい。

「現世で何か買ってきたのかい?」
「そーです。お菓子とか、美味しそうなやつ選んできました。あと、浮竹隊長にお花買ってきてので部屋に飾ります。迷惑だとしても飾ります」
「迷惑なんかじゃないさ。ありがとう」

浮竹隊長の目につくところに私があげたお花があれば、それを見るたびに私のことを思い出すだろう。なんて、不純な気持ちも少しはある。


「ほら、もう着いたんで寝てください」

雨乾堂の中へ入って、とりあえず荷物を床におろして、浮竹隊長を布団へと誘導した。

「すまないな、いつも世話ばかりしてもらって…」
「私がしたくてしてるんです。三席たちだってそうですよ。みんな浮竹隊長のことが大好きで大事だからしてるんです」

体が弱いのは仕方がないことだし、それを迷惑だなんて思わない。元気だったらそりゃあ嬉しいけど。

「みんな、浮竹隊長の元気な姿が見たいんです。だから、無理しないでください。みんなに心配かけたくないなら、大人しくして体調整えてくれた方がいいです」

浮竹隊長を布団へ座らせた。このあと虎徹三席が来ないんだったら今すぐこの布団に潜り込んで添い寝したかった。

「優」
「はい?」

すぐに寝転がるものだと思ったのに、浮竹隊長は私を引き寄せて抱き締めた。ちょうど添い寝だとか不純なことを考えていたところだから、異常なほどにどきどきした。

「ありがとな」

別に、お礼ごときで抱き締めなくていいのに。いや、嬉しいけど、嬉しいけど!虎徹三席が来たらどうしたら……まぁいいか、見られた方が責任がどうだとか言い出したり?浮竹隊長が私を意識してくれるようになったり!?するかな!?

「ど、どうっ、いたしまして」

やり場に困っていた手で、浮竹隊長の体を抱き締めた。浮竹隊長とこんなふうに真正面から抱き合える日が来るなんて。夢心地だ。いつもの肩を貸したりとか、そんな生ぬるい接触じゃないんだ、すごい。
顔は熱いし嬉しいし、混乱してちょっと泣きそうになった。浮竹隊長が私のことなんかどうも思ってなかったとしても、抱き締めてくれるってことは、その、嫌いではないはずだし、他人とか知り合いとかよりももっと大事な存在って思って貰えてるってことだよね!?

「優のおかげで元気が貰えたよ」

それでも浮竹隊長の腕の力が弱いのは、体が弱っているせいだろうか。
抱き合って私ばっかりあんまり長く幸せを感じていても申し訳ないから、浮竹隊長から体を離した。そしたら私の熱くなっている頬に、冷たい手で触れられた。

「その顔のおかげで更に元気になった」
「えっ」

私の真っ赤な、照れた顔で?いやいや、なんで私の照れ顔なんかで浮竹隊長がそんなに嬉しそうに微笑むの。
それってなんだか、すごく思わせ振りじゃないですか。