キスの日





ー尾白猿夫の場合ー


「ね、猿夫くん、5月23日って何の日か知ってる?」

「え?うーん……ごめん、わからないや……」

「えへへ、教えてあげるっ!」

「え?うわっ!」

「猿夫くん、だいすきだよ!」


わたしは猿夫くんに思いっきり抱きついた。突然だけどぎゅうっとしっかり受け止めてくれた彼に大好きの想いを告げるとともに、彼の頬にちゅうっと唇をくっつけた。


「今日はキスの日だよ!」

「そ、そうなんだ……俺もしていい?」

「えっ!?う、うん、どうぞ……」


目を閉じてどきどきしながら頬へのキスを待っていたら、彼は私の唇に優しくちゅうっとキスをした。





ー心操人使の場合ー


「ひ、人使……お、お願いが、あるんだけど……」

「何だよ改まって。」


今日はキスの日だとクラスメイトの女子が話していた。実は私と人使は付き合ってから2ヶ月以上経ってるのにまだキスをしていなくて、これに乗じてキスできないかな、なんて思ったりする。


「き……」

「き?」

「き、き、嫌いなものがあっても!今日の!お弁当!残さず食べなさいよね!」


ああ、またしても素直になれない。心の中で、嫌いなものって何よ!好物しか入れてないわよ!なんて自分で自分に突っ込みを入れてしまう。困った私はそれだけ!と言って振り返ったのだけれど、人使に腕を引っ張られた。


「素直じゃないのがお前らしいな。今日はキスの日だろ。してやるから目閉じとけ。」

「な、な……!私は別に……!」

「俺がしてェの。ほら、目ェ閉じろ。」

「しょ、しょーがないわね!」

「……そんな満面の笑みで言われてもなァ。」


顔がニヤニヤするのを抑えられなくて、言葉と表情が一致しなかった。人使はニヤッと口角を上げていた。しょうがないから目を閉じてやったら、彼の少し乾燥した唇が私の唇に押し当てられた。





ー爆豪勝己の場合ー


「ねぇ、爆豪くん、今日は何の日か知ってるかい?」

「バカか。サンジョルディは先月終わったわ。」


サンジョルディの日とはスペインの記念日でその日付は4月23日。男性は女性に薔薇を送って、女性は男性に本を送るというもの。


「バカはてめェだわ。新しい図鑑あげたし薔薇もらったわ。覚えとるわ。」

「あぁ!?てめ……チッ、いちいちトゲ向けるのやめろや……」

「あはは!ごめんごめん!今日はね、キスの日だよ!」

「…………そーかよ。」


ぐいっ


「わあ!」


ちゅ


「これで満足か?」

「う、私からしようと思ってたのに……」


いつもは私のイバラやトゲにビビって下手に出てくるくせに、今日は珍しく私より上手に出られたもんだからか、爆豪くんは機嫌良さそうな悪人ヅラでニヤリと笑っていた。





ー轟焦凍の場合ー


「お、ここにいたのか。」

「ショート!どうしたの?」


寮の食堂でトコヤミにもらった林檎を齧っていたらショートが会いに来てくれた。額にはうっすら汗が滲んでいるような気がする。何か急ぎの用事だろうか。


「いや、あっちで峰田と上鳴が今日はキスの日だとか女子に向かって騒いでたから。お前に余計なことされんじゃねェかって心配で。」

「そうなの?ブドウもデンキも、チューしたいなら二人ですればいいのにね!」

「……それ、ちょっと面白ェな。」

「私はショートとチューしたいな!ダメ?」

「今は誰もいねェからいいぞ。目、閉じろ。」

「うん!」


ショートは周りをキョロキョロ見渡してから、目を閉じるように言ってきた。ワクワクしながら目を閉じたらショートの柔らかい唇が私の唇とちゅうっとくっついた。ちょっぴり蕎麦のつゆの味がしたと言ったら、ショートは林檎の味がしたと返してきた。どっちも美味しいチューだね!






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