笑顔がいちばん



「んっ、んん……」

ちゅっ

「真、好きだよ……」

「ん……わたしも、すき……」

「可愛い……」

「は、恥ずかしいよお……んむっ……」


今日は猿夫くんのお部屋でふたりで一緒に宿題をしてたんだけど、思いの外早く終わってしまった。猿夫くんは、一緒にゲームでもする?って言ってくれたんだけど、わたしの方から前みたいなちょっぴり大人なキスの練習がしたいって言ってみた。そしたら猿夫くんは顔と尻尾を真っ赤にして、優しくわたしを抱き上げてベッドに下ろしてくれた。それからふたりでベッドに横たわって、しばらく触れるだけのキスをしている。


「んっ、んむ……」

「真、口開けて。」

「ん、あーん。」

「……くくっ、ちょっとでいいよ。」

「えへへ、ごめんね。」


口を開けてって言われてちょっと大きく開けちゃったら笑われてしまった。恥ずかしくてわたしも笑ったら猿夫くんが頭を撫でてくれた。でも、口を開ける、ってことは、つまり、その、舌を、ってことだよね……


「……真?」

「あ、いや、えっと……」


わたしが少し不安そうな顔をしたからか、猿夫くんはわたしの身体を起こしてくれて、あぐらをかいた脚の上に座らせてくれて後ろからギュッと抱きしめてくれた。大好きな猿夫くんに抱っこされて自然と笑みがこぼれる。


「怖かったら言いなよ。無理しなくていい。俺はこうして一緒にいられて、真が笑ってくれさえすれば幸せだから。」

「猿夫くん……」


猿夫くんは本当に優しい。わたしも猿夫くんと同じくらい優しくしたい。頑張りたい、って思ったわたしは猿夫くんの方を向いて、口にそっとキスをして、お口開けて、ってお願いした。猿夫くんは少し戸惑ってるみたいで、もう一度わたしに確認の声をかけてくれた。


「嫌だったらちゃんと言うんだよ。」

「うん、わかった。……ね、猿夫くん。」

「うん?何?」

「……優しく、その、ゆっくり、してね。わたし、その、気持ち良すぎたら、また気絶しそうになっちゃうから……」

「ッ……!!善処します……」


恥ずかしくなってお互いの顔が見れなかったけど、ちらっと見たときぱちっと目があって。ふたりして林檎みたいに真っ赤な顔をしてニコッと笑いあった後、手をきゅっと絡めて繋いだ。それから尻尾で優しく身体を寄せてくれて、目を閉じてって言われたから目を閉じた。そっと猿夫くんの柔らかい唇の感触があって、軽く口を開けたら猿夫くんの熱い舌がわたしの口に入ってきた。


ちゅっ……ちゅるっ……

「んむぅ……んっ、ふぁ……」

「ん……んむ……は……」

ちゅ……ちゅくっ……


舌と舌が動いて絡まるたびに甘く痺れるような感覚でいっぱいになる。熱くてぬるぬるしてて、なんだかとても気持ちが良い。それに、猿夫くんの荒い息遣いや掠れた声が、男のひとって感じがしてすごくドキドキして。あまりにも気持ち良すぎて、わたしの身体が少しぴくんと跳ねたら猿夫くんが唇を離した。


「ごめん、大丈夫?」

「ん……」

「もう少し、ゆっくりしようか。」

「うん……」


猿夫くんがわたしの頭を撫でてくれたあと、肩に手を乗せてきて、もう一度キスをした。今度はさっきよりもゆっくり舌を絡ませてくれたんだけど、ねっとり絡んでくるからかなんだかさっきよりも気持ちが良くて。唇を離した時、わたしの身体はくったりしてて猿夫くんに支えてもらわなきゃ起きていられなくなっていた。


「真、大丈夫?ごめん、無理させちゃったね。」

「んーん……すっごく、気持ち良かった……」

「うん、俺も。それと、真、すごく可愛かった。」


猿夫くんに抱きしめられて、たくさん頭を撫でてもらいながら気持ち良かったねって話をした。けど、わたしには少し不安があって。


「……猿夫くん。」

「ん?何?」

「わたし、えっちかなあ……」

「えっ?」

「猿夫くんといっしょに……もっともっと、気持ち良くなりたいなあって、思っちゃうの……」

「……じゃあ俺もえっちかもしれないね。俺も、真をもっと気持ち良くさせたいって思ってる。」

「……嫌わない?」

「まさか。嫌うわけないだろ。」


そう言って猿夫くんはわたしの頬を両手で挟んでニコッと笑ってくれた。前にわたしがしたのと同じだったから、わたしもニッと笑ってそっと触れるだけのキスをした。はしたないって思われちゃうかもって不安だったけど全然そんなことはなくって。


しばらく抱きしめあったままでいて、今日はもうおしまいにしよっか、って言ってくれたから、首を縦に振った。そっと身体を離したらぱちっと目があって、やっぱりもう一度だけ触れるだけのキスをした。おしまいって言ったのにね、ってふたりしてクスクス笑いあった。そのあとは一緒にゲームをしたり、今度遊びに行ってみたいところをスマホで一緒に眺めたり、他にもたくさんお話をした。


気がついたらもう夕方になっていたから、お家に帰ることにした。1人で帰れるよって言ったんだけど、まだ一緒にいたいから、って猿夫くんはわたしの家まで手を繋いで一緒に帰ってくれた。


「今日も楽しかったねえ。」

「そうだね。あ、明日は日直なんだっけ?」

「そうなの。だから一緒に行けないの……それに明日は部活が遅くなるから友達と一緒に帰るの。」

「うーん、じゃあ明日は会えないかもしれないね。」


猿夫くんが少し寂しそうな顔をした。不謹慎だけどちょっぴり嬉しいと思ってしまった。でもやっぱり笑って欲しかったから、ちょっと待っててね、って言って、わたしは一旦家に入って靴を履き替えて出てきた。猿夫くんは意味がわかってなかったみたいだから、早足で近づいて、首に腕を回して背伸びをして、ちゅっと頬にキスをした。そしたらふにゃりと笑ってくれた。


「わたし、猿夫くんの真剣なかっこいいお顔もだいすきなんだけど、やっぱり笑ったお顔がいちばんすきだなあ……」

「そ、そう?改めて言われると照れるな……」

「うん、だから、これからもたくさん笑ってほしいな。」

「……真がそばにいてくれれば俺ずっと笑ってられると思うよ。」

「そっかあ……えへへ、じゃあたくさんそばにいさせてね。」


猿夫くんが嬉しいことを言ってくれて、急に顔が熱くなったから両手で頬をおさえた。そしたら、真は林檎みたいに赤くなって笑ってる時がいちばん可愛いよ、って言ってくれたからますます顔が熱くなってしまった。





笑顔がいちばん




「ところで、真、本当積極的になったよね……」

「だめ?」

「いや、嬉しいけど、俺そろそろ本当にヤバイかもしれない……」


キミを壊してしまうんじゃないかって思ったら中々積極的になれなくて。

だけど、自分の理性の糸が日を追うごとにプツンプツンと切れていってる気がする。







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