プレゼントは魔法
「リゼ!誕生日おめでとう!これ、ボクからのプレゼントだよ!」
「わあ……ありがとう!カロル!」
さすがは
いつも研究ばっかりのリタも今日は珍しく買い物に誘ってくれた。エステルも一緒に行こうってことで、今はエステルが私を可愛く仕上げてくれているのだけれど。
「ねー、まだ?もう良くない?」
「ダメです!お誕生日なんですよ!今日はリゼが主役なんですから!」
「わ、わかったよ〜。でも、リタ待ってるんじゃないの?時間ギリギリだよ?」
「いいえ、大丈夫です!……はい、できましたよ!どうです?」
鏡の前に移動してエステル開いてくれた三面鏡を見ると、凄く複雑にそして綺麗に編み込まれた自分の髪、そして自分でも美しいと思ってしまった顔が映っていた。エステルはどんな魔法を使ったんだろうか。
エステルに腕を引っ張られて待ち合わせ場所に着くと、リタに首根っこを掴まれたレイヴンがいた。レイヴンがいるなんて聞いてないんだけど。
「……いいんじゃない?」
「頑張っちゃいましたから、少々遅くなってしまいました。すみません。」
「気にしてないわ。このおっさんの準備にも時間かかったし。今日がリゼの誕生日じゃなかったら燃やしてやるところよ!じゃ、エステル、行きましょ。」
「はい!ではお二人とも、ごゆっくり〜!」
「え!?ちょっと……!?」
リタとエステルは私たちを残して去って行った。去り際にリタが、誕生日おめでと、私達からのプレゼントよ、なんて言っていた。ちらっと彼を見ると、真っ赤な顔をして目線をキョロキョロ泳がせている。二人の厚意を無駄にしたくはないし、折角だから彼に甘えてみることにした。
「……レイヴン、今日、何の日か知ってる?」
「も、もちろん!リゼちゃんのお誕生日でしょ!おめでとう!そ、それとプレゼントも用意してるわよ〜!」
「ありがとう、えっ、何がもらえるの?」
「え、っと……お、おっさんの奢りでデートしちゃうとか?……ダメ?」
好きな人からのデートのお誘いを断る女の子なんているのだろうか。
「……最っ高のプレゼント!早く行こう!」
「わっ!リゼちゃん!手、取れちゃうから!」
レイヴンの手をぎゅっと握って思いっきり引っ張ると、彼は足をもつれさせながらも私について来てくれた。
レイヴンの奢りで一緒に美味しいものを食べたり、服やアクセサリーのお店を見て回ったり、ジャムの食べ比べの出店で一番美味しかったリンゴのジャムを買ってもらったり、今日のお礼に後でリタとエステルにもあげようと思って自分のお金で二人へのジャムを買ったりした。どこに行っても楽しくて楽しくて仕方ない。エステルがかけてくれた綺麗になる魔法と、リタがくれた大好きな人と過ごす魔法の時間は本当に最高のプレゼントだと思う。
少し空が暗くなったから、近くにあったお洒落なお店で夕食をとることにした。ここもやはり彼がご馳走してくれて、美味しいご飯の後にはサプライズでケーキのプレートが出てきた。プレートが出てきたら予約していたなんてことはバレバレで。だけれども偶然見つけたお店に入ったていを装っていたのを思うといかにも彼らしいと感じる。
ご飯もケーキもとても美味しかった。二人で一緒に外に出たら、街はまだこれからと言わんばかりに賑わっていた。でもそろそろみんなのところに帰らなきゃ、魔法の時間はおしまいだ。
「レイヴン、今日は一日ありがとう!とっても楽しかった!」
「喜んでもらえて良かったぁ〜。おっさん、若い女の子が喜ぶプレゼントなんて思いつかなくてね……嬢ちゃんとリタっちに感謝よ〜!」
「へへっ、三人にありがとうだね!」
「……リゼちゃん、ちょっとこっち着いて来て。」
「え?うん。」
レイヴンに着いて少し歩くと、小さな川のほとりに出た。一体何をするんだろう。
「リゼ、誕生日おめでとう。」
「あ、ありがとう。」
レイヴンがいつになく真剣な、だけど笑顔で、私を呼び捨てにした。いつもはふにゃふにゃした可愛らしい笑顔でちゃん付けで呼んでくるのに。なんだかむず痒い気がして、エステルが整えてくれた髪を弄ってしまった。そしたら髪が崩れてぱさぱさと落ちてしまった。するとレイヴンが一歩前に出て、ふわっと私を抱きしめた。
「レ、レ、レイヴン!?な、な、何して……」
「しっ。動かないで。」
「は、はい……」
レイヴンは私の髪を一旦解いて、懐から出した櫛で綺麗に梳かしてくれた。そして、これまた懐から何かを取り出した。彼は私の髪を優しく手に取ってくるくると捻り、一度グイッと引っ張ると、でーきたっ、と言って私から一歩離れた。顔を見ると、いつものふにゃっとした笑顔だった。
「やっぱり形に残るモノあげたいじゃない?それ、おっさんからのプレゼント!」
「え、あ、ありがとう……」
「あっ!せっかく留めたんだから触っちゃダメよ〜!あとで寝る前に見てちょうだい!」
「うん、わかった!」
それから二人で手を繋いでみんなのいる宿に戻って行った。お風呂を済ませてから改めてプレゼントをまじまじと見てみると、綺麗な紫色の藤の花がモチーフになった簪だった。綺麗だなと思ってしばらく眺めていたら、ジュディスが後ろからこんなことを言ってきた。
「あら、綺麗な簪。レイヴンからもらったの?彼、なかなか大胆なのね。」
「大胆?そうかな、これ、上品で可愛らしいと思うけど。」
「……知らない方が良いこともあるわね。」
「えっ?」
「何でもないわ、それより、改めてお誕生日おめでとう。また明日ね、おやすみなさい。」
「あっ、うん、ありがとう、おやすみ!」
今日一日、本当に魔法にかかったようだった。みんなの誕生日も私がみんなに魔法をかけてあげられるよう頑張ろうと決めて、柔らかいベッドに身体を預けて目を閉じて、そのまま魔法の時間に終わりを告げたのだった。
プレゼントは魔法
「おい、ジュディ。聞こえちまったんだけど、おっさんがリゼに簪贈ったってマジか?」
「ええ、本当よ。」
「……あのおっさん意味わかってんのか?」
「さぁ?何も考えてないんじゃない?幸い彼女も知らないみたいだし、そっとしておきましょ。」
「それもそうだな……」
back
top