ちぇんじ
「いやっ!猿夫くんのばかっ!えっち!」

「し、仕方ないだろ!?じゃあ真はその身体で女風呂入るの!?」

「心は女の子だもんっ!それに猿夫くんが他の女の子の裸を見ちゃうのはいやっ!」

「じゃ、じゃあ俺がこの身体で男風呂入ってもいいの!?」

「だだだ、だめだよっ!恥ずかしい!ばか!すけべ!」

「おいおい、風呂がなんだのって、峰田じゃあるまいしお前ら何喧嘩して……」

「かっ、上鳴くんっ!助けてっ!」

「うわっ!?尾白っ!?」


お察しの通り、わたしと猿夫くんの身体がチェンジしてしまったのだ。原因はわからない。ふたりでお昼寝していただけなのに目が覚めたらお互いが入れ替わってしまっていたのだ。しかも今回は頭をぶつけても直らない。わたしは猿夫くんの身体で上鳴くんの後ろに隠れたけれど、わたしの方がちょこっと目線が高くて隠れきれなかった。混乱する彼にふたりで事情を説明したら、彼はニヤニヤしながら猿夫くんと同じことを言ってきた。


「ふたりで貸し切って一緒に入りゃいいじゃん。」

「は、恥ずかしいからいやなの!」

「え、ふたりってまだヤって……」

「ないから!」

「ないよ!」


そう、わたし達はお互いの身体を真っ暗な中でしか晒したことがなく、大人になるまでその行為は禁止のお約束。真っ暗な時でさえ死んでしまいそうなくらい恥ずかしいのに一緒にお風呂だなんて、そんな、破廉恥なこと……


「は、恥ずかしいっ!」

「真ちゃんなら可愛いのに尾白の身体だから動きが……」

「うっ、否定できない……でも、風呂本当にどうする?」


わたしはとても真剣に考えた。事情を説明したとしても、この身体で女の子のお風呂に入って猿夫くんの逞しい身体をみんなに見せたくはない。これはただの独占欲だ。一方で男の子のお風呂で他の男の子の裸を見るなんてわたしには耐えられない。逆もまた然り、彼に他の女の子の裸なんて見て欲しくないし、わたしの身体を彼以外の男の子に見せるなんてまっぴらごめんだ。わたしの心も身体も猿夫くんだけのものだから。仕方がない、と溜息を吐いて、わたしは彼らの提案に乗ることにした。


「い、いい!?目隠しとっちゃだめだからね!」

「真は見えてるのズルくない……?」

「わ、わたしはいいの!ほら、洗ってあげるから座って!」


わたしはわたしの身体の目にアイマスクをつけさせて、わたしは腰にタオルを巻いて、彼と一緒にお風呂に入ることになった。一応全員入り終わったことは確認して、外では上鳴くんが見張っててくれている。


彼の手を取り、椅子に座らせて自分の身体の髪や身体を丁寧に洗った。時折彼がわたしの身体で甘い声を出すのを聞くとなんだか無性に抱きしめたくなったり下腹部の辺りが熱くなったりしたから、猿夫くんは普段わたしにこんな気持ちなのかとまたひとつ彼のことがわかって嬉しく思う。お顔を洗う時はアイマスクをとってあげて、顔を泡まみれにしてあげた。お湯をかけて泡を流してあげて、綺麗になったところで彼を湯船に入れてあげようとしたのだけれど、彼はわたしの手首をきゅっと掴んだ。


「俺も真の身体洗う。」

「えっ?目隠しはずしちゃだめだからいいよ。自分で洗うよ。」

「……俺の身体だってあんまじろじろ見られたくない部分があるの。タオルの下とか、自分で洗える?」

「あっ……そ、それは……」


実はさっきからじんわり熱を持っているタオルの下。わたしはこの場所に対する見識が全くなくて、どうしたらいいのかがわからないのが本音だった。お風呂に入って洗い残しがあるのは彼だって不本意だろう。けれど彼にわたしの身体を見られるのは恥ずかしい……ぐるぐると悩んでいたら猿夫くんがわたしにむぎゅっと抱きついてきた。お腹の辺りにわたしの大きな胸が当たってすごく恥ずかしいと思ったら、なんだか下腹部に急激に熱が集まって、タオルがぽこっと膨らんでしまった。


「きゃあ!?な、なにこれ、大丈夫!?」

「うん、男なら普通の反応だよ。……真が自分の身体に抱きつかれてそうなるって、やっぱ身体って正直だよね……」


そう言いながら猿夫くんはアイマスクとわたしの腰のタオルを剥ぎ取った。きゃあっと叫んだけれど、再び彼に抱きつかれてしまい、わたしもそっと彼を抱きしめた。


「ま、猿夫くんのえっち!取らないでって言ったのに!」

「ごめん、風呂入るのに不便だし……でも、真の身体って本当に綺麗だね。すべすべでつるつるで真っ白で……」

「ま、まじまじ見ないでよお!」

「今、入れ替わっててよかったね。」

「えっ?」

「入れ替わってなかったら、今確実に襲ってるよ……」


いつも真面目で努力家でかっこよくて王子様のように優しい猿夫くんは、えっちな気分になった時はとてもいじわるなことを言ってくる。今もわたしの身体で猿夫くんの身体をつーっと指でなぞったり胸に舌を這わせたり……自分の身体なのによくやるなあ、と呆れたのも束の間。彼はわたしと身体を離して、じいっとわたしの身体を見つめて顔を林檎の様に真っ赤にした。


「ちょ、ちょっと!さ、最低!えっち!すけべ!」

「い、いいでしょ別に!夜はいつも裸でもっと恥ずかしいことして……」

「きゃああああ!わ、わかった!わかったから!も、もういじめないでよお!は、早く洗って!ほら!」

「くくっ……わかりました。」


わたしは猿夫くんに洗ってもらうために椅子に座った。尻尾があるからうまくバランスが取れないけど、彼がコツを教えてくれて随分楽になった。わしわしと頭を洗ってもらって、身体中をごしごしと洗ってもらって、最後は脚の間の、ソレ。


「こ、これ、どうやって洗うの?」

「真は知らなくていいの。ほら、目、瞑って。」

「え、ええ!?やだよ!」

「俺には目隠しさせたのに?」

「う、うう、わかりました……」


わたしはギュッと目を瞑って、彼にそのまま身を任せた。彼がわたしの手で優しくソレを撫で回している。これは本当に洗っているのか?と心配になるけど、デリケートな部分だから、優しく手で洗わないといけないのだろうと自分を納得させた。全部洗い終わって、彼にシャワーで泡を流してもらった。これでお風呂はクリアできたから、早く出ようと脱衣所に向かって歩こうとしたら、再び彼に抱きしめられた。


「なーに?お風呂、終わったよ?早く出ようよ。」

「……あのさ、このまま、練習、しない?」

「……えっ!?」

「いや、このままならさ、俺が何されたら気持ちいいかとか、真はどこを弄られるのが好きかとか、色々お互い知れるかな、って……」

「こ、こ、ここで?上鳴くんに悪いよ!」

「……場所を変えればいいってこと?」

「えっ!?」


揚げ足をとられてしまってぐうの音も出ない。なぜなら彼の言うことに少し興味を持ってしまっていたのが本音だからだ。彼を気持ち良くしてあげたいから、彼の好きなことを知りたい。けれど恥ずかしかったわたしは、興味ないもん!と言ってしまったのだけれど。


「真の個性って便利だね。本当に色が抜けちゃうんだね。」

「あっ!ずっ、ずるい!」

「ずるくないさ、立派な個性だよ。さて、本当はえっちなことに興味がある真のためにも早く風呂から出ますか……」

「い、言い方ひどい!もう!ばか!……は、早く、行こ……」

「……俺の身体になってもキミは本当に可愛いね……」





ちぇんじ




「おっ、割と早かったな!」

「う、うん、あの、あ、ありがとうね……」

「上鳴、助かったよ。じゃ、3階まで一緒に行こうか。」

「身体クネクネさせてる尾白と堂々としてる真ちゃんってなんか不思議な光景だわ……」



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