ある秋の1日
木々が赤や黄色で着飾っているのを見かけると、秋らしくなってきたなぁと風情を感じる。さて、今日は日曜日。特にやることもなく、なんとなく散歩でもしようと寮の外に出てみた。


この学校は本当に広い。もう3年生だというのにまだ足を運んだことのない場所が沢山ある。障子や砂藤にでも声をかけて学内を探索するのも面白かったかな?なんて思いながら歩いていると、どこからか何かが燃えているような、少し焦げたような匂いがした。匂いのする方向へ歩いて行き、建物に沿って曲がってみると、焚き火を焚いている真がいた。俺が現れたことに気がついた彼女は丸くて大きい綺麗な目をまん丸にしてぱちぱちと瞬きをしている。今日もなんて可愛らしいのだろう。しゃがんでいるため自然と上目遣いになっているのが可愛さを更に跳ね上げてくる。もはや妖精や天使なんて言葉じゃ言い表せない。


「猿夫くん!どうしてここに?」

「真こそ、こんなところで何してるの?」

「わたし?わたしは、美術の課題の絵で描く場所を探してたの。そしたらここに葉っぱがたくさん落ちてたから、近くにあったほうきで集めたの。」

「うん、それで?」

「えっと、顧問の先生が、集めた葉っぱで焼き芋でもする?ってお芋さんを分けてくれたの。今焼いてるんだあ……猿夫くんも食べる?」

「えっ、いいの?」

「うん!まだ置いたばっかりだから、一緒に待とうよ!」

「うん、ありがとう。」


焚き火を挟んで真の正面に座ったら、彼女はニコニコしながら早く焼けないかなあと頭をゆらゆらと揺らしていた。あまりの可愛さに俺の尻尾も彼女の動きを真似するように左右に揺れてしまっていた。だが、彼女を注視したばっかりにあるものが目に入ってしまい、俺の尻尾の動きはぴたっと止まってしまった。


「あれっ?猿夫くんの尻尾、止まっちゃったねえ。」

「……あっ、う、うん、ちょっと、ね。考え事。」


彼女に見破られてしまわないよう、咄嗟に目を瞑って答えてしまう。


「そっかあ……あ、わかった!早くお芋さん食べたいんでしょ!」


これはなんともありがたい見当違いだ。


「……うん、まあ、ね。」

「えへへ、わたしも同じ!わたし達、食いしん坊さんだねえ……」

「う、うん……」


真は再びまだかな〜まだかな〜と言いながら頭を揺らし始めた。けれど俺の目は彼女の頭ではなく、例のあるもの、つまり、その……彼女の、真っ白なパンツに、集中していた。雪のように真っ白な、むちむちした太腿よりも更に白い純白のパンツに。これはいわゆるパンチラというやつだろうか。これまで女の子のスカートが風でめくれたりたまたま下着が見えてしまったことはごく稀にあったけれど、それを見てもなんとも思わなかったし特に興味も持たなかった。しかし、相手が真となれば話は別だ。思わずゴクリと生唾を飲んでしまった。それに気がついた真は膝に肘をついて、両手で小さな顔を支えながら、お芋さん待ちきれないねえ、なんて。俺が待ちきれないのは焼き芋じゃなくてキミなんだけど。あまりにも注視しすぎたせいか、真の顔は林檎の様にかあっと赤くなった。


「……そ、そんなにじーっと見られたら照れちゃうなあ……」

「……あっ、ご、ごめん!」

「えへへ、わたしも猿夫くんのこといっぱい見ちゃおうかなあ……」


少し顔を斜めにして、俺の目に丸くて大きい綺麗な目を合わせてきた。きらきらと輝く瞳は漆黒の宝石の様だ。まるで黒真珠やブラックオニキスといったところか。これ以上この美しい宝石を見つめていると吸い込まれるか石になるかしてしまう、なんて馬鹿なことを考えた俺は思わず目線を下にやってしまい、またしても純白のパンツが目に入って、慌ててしまった俺は尻もちをついてしまった。


「うわっ!!」

「えっ?どうしたの?」

「い、い、いや……」

「あっ!手、擦り剥いてるよ!ちょっと待ってね、鞄に絆創膏あるから……」

「あ……う、うん、ありがとう……」


全く情けないことに、地面に手をついたことで擦り剥いてしまった様だ。じんわりと血が滲んでいる。真が絆創膏を見つけて、俺の手に貼るために立ち上がろうとしたときだった。


「きゃあああ!!く、くも!!あうっ!!い、痛い……!!」

「…………!?」


真は蜘蛛を見つけてしまったらしく、慌てて跳び退いたのだがバランスを崩して転倒してしまった。脚をぱかっと開いてしまっており、可愛らしいフリルの付いた純白のパンツが丸見えになってしまっている。俺は慌ててジャケットを脱いで、彼女の膝にそれをかけた。


「えっ?えっ?何?」

「あっ……そ、その、し、下着が見えてたから……」

「……えぇっ!?み、見たの!?」

「い、いや!えっと、その……」

「……うそついてもわかるよ!」

「ぐっ……ご、ごめん!見ました!真っ白で可愛いフリルのついた綺麗な……」

「きゃああああ!!い、言わなくていいから!!ばか!!えっち!!すけべ!!」


林檎っ面で涙目になりながら睨まれてもただただ可愛らしいだけだ。けれどそんなことを言ってしまえば嫌われてしまうに違いない。もう一度ごめんねと謝ると、バツが悪そうにわたしもごめんね、と小さく呟いて体制を整えて俺の上着を返してくれた。それから思い出したように、お芋さん!と叫んで、枝で焼き芋の包みを引き寄せ、軍手をつけてぱりぱりと開け、ぱかっと半分に割った。見事な黄色、ふんわり甘い香り、見た目も香りも素晴らしい。


「わあっ!美味しそう!はいっ、猿夫くん!」

「あ、ありがとう……ふー……んっ、甘っ!うわっ、すごく美味しいね!」

「ふー!ふー!んっ……あまーい!えへへ、美味しい〜!」


真はニコニコしながら焼き芋に齧り付いている。可愛い彼女の笑顔があればこの焼き芋も更に甘くなるに違いない。俺も二口目を食べようとしたのだが、やはりまたしても純白のパンツが視界に入ってしまった。かあっと顔面に熱が集まったのを感じた俺は、焼き芋の熱さで顔が赤くなったことにしようと思い切り焼き芋に齧り付いた。けれど彼女にはお見通しだったようで、猿夫くんのえっち……と恥ずかしそうに呟いて、くるりと小さな背中を向けてきた。しかし先ほど転んだ時にスカートの裾が巻き込まれてぺろんとめくれていて、再び可愛いフリルが目に入ってしまった。


「真、スカート巻き込んでる!」

「えっ……きゃあああ!!ま、ま、猿夫くんの、え、え、えっち!!」

「えぇ!?お、俺!?」

「あぅ……ご、ごめんなさい、わ、わたしの不注意です……」

「ん……はい、これで大丈夫だよ。」

「えへへ、ありがとう……」


スカートを軽く引っ張って、少し名残惜しいけれど彼女の下着を隠してやった。しかし、真は再びくるりと俺の方を向いてきたのだ。彼女はしっかりしているようでやや抜けているところがある。そこがまた可愛いのだが。今日で言うと、またこの体制で向き合ったもんだから、太腿の間から純白のパンツがちらりと見えているのだ。きっと教えてあげた方が彼女のためになるだろう。


「真、スカートの時はその体勢で座っちゃダメ。」

「えっ?何で?」

「……下着が見えるから。」

「……!?やっ、やだっ!!」

「ほら、これ膝掛けにして。そうすれば見えないから。」


焼き芋を置いて、もう一度ジャケットを彼女の膝にかけてやった。もしも他の男がここに来てしまったらたまったもんじゃない。ただの嫉妬心なのに、彼女は親切心と受け取っているようだ。


「あ、あ、ありがとう……えへへ、やっぱり猿夫くんは優しいね……」

「そう?普通だと思うけど……」

「…………あ、あ、あ、あの……」

「うん?」


彼女は林檎の様な真っ赤な顔で目線をキョロキョロと泳がせ始めた。そしてとても意外な質問をしてきた。


「……し、白は、その、す、好き?」

「…………えっ?」

「あぅ……だ、だからね、えっと、し、し、白い、下着、ど、どう、かな……」


こんな美少女からうるうると瞳を揺らしながら見上げられて興奮しない男がいるなら見てみたい。


「ッ……!も、もちろん、好き、だよ……その、清らかな感じが、良いよね……でも、真ならどんな下着でも……その、か、可愛い、よ……」

「や、やだもう……恥ずかしい……」


真は火が出そうな程真っ赤な顔で焼き芋を齧り始めた。時折ちらちらと俺の方を見て来るのがとても可愛らしい。けれど、気がついてしまった。脚がぷるぷると震えてしまっていることに。俺は場所を移動して彼女の隣に腰掛け、尻尾を地に這わせるように下げた。


「尻尾、座っていいよ。」

「えっ?お、重いよ!」

「真は軽いよ。もっと太っても良いくらい。それに俺、尻尾で自分のことも支えられるし大丈夫だよ。」

「そ、そう?……えへへ、しゃがんでるのちょっとだけ疲れてたから、嬉しいな。ありがとう!」


お礼を言うとともに真が俺の尻尾の上に座ったのだが、どうやらスカートを敷かなかったようで。俺の尻尾に彼女の熱が、柔らかさが直に伝わってきた。このさらさらした感触はあの純白のパンツ、そしてつるつるでむにむにとした感触は彼女の脚の付け根だろう。俺の個性、尻尾で良かったなぁ、なんて馬鹿なことを考えながら、ふたりで寄り添って秋の味覚に舌鼓を打ったのだった。





ある秋の1日




「ま、ま、猿夫、くん!」

「ん?何?」

「……あ、あの、つ、つ、次は、な、何色、が、いい?」

「……えっ!?」

「……な、何色が、いい?」

「じゃ、じゃあ……ピンク、とか……」

「わかった……ぬ、脱がさないで、ね?」

「……努力します……」





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