我が儘なヤツ
スーパーの買い物カゴに無言で入れられたモノに思わず眉間に皺が寄る。
「晋助、コレ何のつもりだ」
「ボジョレーの解禁らしいじゃねぇか、買え」
「却下に決まってんだろ、コレ、いくらすんだよ、今金欠だって言っただろ、それに俺は未成年だから買えねぇよ。残念だったな」
「てめぇが買えねぇなら俺が買うから平気だろ、金」
「だから金欠だって言ったろ、こういう贅沢品は今週末だ。たぶん今週末なら……まぁ、なんとか」
「ちっ」
「ちっ、じゃねぇよ。参考に聞くけど、コレ、いくらするんだ」
「一万二千八百円」
「アホか、んな高いもん買えるか! 返してこい、元の場所に戻してこいッ」
「ちっ」
「だから、ちっ、じゃねぇよッ、居候がッ」
この男はきっとお坊っちゃまに違いない。
江戸をぶっ壊したいらしい高杉晋助は、金銭感覚がいろいろ間違っている。江戸という世界ではこれが当たり前なのか、と考えもしたが晋助の話を総合すると、この男がただの我が儘で自己中なのだと結論に至った。コイツは江戸で相当、甘やかされてる。
「これでも、俺ァ気ぃ使ったんだがな。本来なら、こっちがいい」
晋助が指したワインは三万六千円の文字が輝いている。
「お客様、お目が高い。こちらは今年のボジョレーの中でも特に良」
「いらねぇから、ウンチクとか説明とかいらねぇから、晋助、行くぞ。こんなん買えるわけねぇ、気ぃ使った意味は全くない」
晋助の腕を引き特設ワインコーナーから遠ざかる。
「千晴、てめぇには季節感が足りねぇ」
「ワインで季節感もへったくれもあるか。季節感なら秋刀魚とキノコご飯で充分だ。おっ、秋刀魚が安い」
「仕方ねぇ……塩焼きとポン酢でいい」
「竜田揚げもいいな、多めに買って冷凍だ」
「貧乏くせぇな」
It is over.
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